抄録
2種類のカイコ濃核病ウイルス,DNV-1とDNV-2を両ウイルスに感受性のカイコ幼虫に接種し,両ウイルス間の相互関係を調べた。両ウイルスを同時,あるいは時期をずらして接種したいずれの場合も,干渉現象が認められた。感染率100%をもたらす高濃度の両ウイルスを接種した個体のパラフィン切片を作成し,酵素抗体(間接)二重染色法により,中腸組織中のDNV-1とDNV-2抗原の所在を染め分けた。両ウイルスの感染が,それぞれ独立に起こるとすると,ほとんどの円筒細胞が両方のウイルスに感染すると考えられるが,実際には両ウイルスに感染している一部の細胞のほか,DNV-1あるいはDNV-2のみに感染している細胞が存在した。以上の結果から,DNV-1とDNV-2の間には,個体レベルと細胞レベルでの感染において干渉が存在することが確認された。