抄録
グロスキャビネットを使用した定温,定日長条件下で,キンモンホソガの休眠誘起に対する光周反応の世代間差について調査した結果,次のことが明らかになった。
1) 盛岡個体群第1世代の15, 20, 25°C短日(12時間日長以下)条件下における休眠率は50%あるいはそれ以下であり,第2世代以降に比べて著しく低かった。
2) 越冬世代と第1世代の交配F1の光周反応は,母親に越冬世代を用いた場合は第1世代の日長時間-休眠率曲線に類似し,逆交配の場合は第2世代のそれに類似した。
3) 第1世代にみられた休眠抑制機能は,越冬世代の母親から受け継がれるものであり,この情報は母体内の卵母細胞あるいは卵細胞内に形成され,細胞質を通じて次世代に伝わるものと推定された。なおこの影響は1世代限りで消失した。
4) 第2世代も第3世代に比べると,短日域で非休眠蛹が生じる比率が若干高かった。これらの原因としては寄主植物の葉齢,無脚幼虫期の経過齢数の違いが考えられた。
5) 日長感受性の世代間差は盛岡個体群のほか旭川,須坂,金沢,浜松,甘木の各個体群にもみられ,普遍的に存在するものと考えられた。