日本応用動物昆虫学会誌
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イネミズゾウムシ越冬世代成虫の越冬地における発生時期の予測
小林 荘一北村 泰三松井 正春
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1988 年 32 巻 1 号 p. 13-19

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抄録

イネミズゾウムシ越冬世代成虫の越冬地における発生消長を,有効積算温度から予測する方法を以下の実験によって得た。
1) 長野県下の5地点で1983年と1984年に網枠を用いて越冬世代成虫の出現時期を調査した。出現時期は年次,標高により異なり,環境温度に密接に関係していた。これらのデータを用いて,有効積算温度と累積出現個体率との関係をロジスチック式を用いて表わした。
2) 異なる飼育温度下で越冬世代成虫の50%個体の摂食開始前期間を調査した。その零点は13.9°C,有効積算温度は34.4日度であった。そして,有効積算温度と摂食開始前期間を終了した累積個体率との関係をロジスチック式で表わした。また,試験管内における茎葉などへの登攀率は,摂食開始前の個体では低い傾向が見られ,摂食開始後の個体では温度の上昇に伴って高くなり,17.5°C付近で急速に高まった。
3) 2月から3月に越冬地で採集した越冬世代成虫を異なる温度条件で飼育し,有効積算温度と飛翔筋が144μmに達した累積個体率との関係をロジスチック式として表わした(零点は,13.8°C)。また,同様に飼育した越冬世代成虫の死亡までの日数を調査した結果,零点は11.5°C, 50%個体の死亡までの有効積算温度は779日度となり,有効積算温度と累積死亡率との関係をロジスチック式で示した。
4) 以上で得られた実験結果および実験式を用いて,越冬地における越冬世代成虫の発生消長の予測曲線を求めた。茨城県谷田部町の雑木林内での発生消長の実測値と予測値とを比較したところ,両者はおおむね適合した。

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