ホソハリカメムシ休眠成虫における越冬場所へ移動後の,定着の誘因としての羽化後の摂食と温度の影響を調査した。
実験室内で羽化後の摂食0日(羽化後,摂食なし),10, 20, 30日,継続摂食の5区で,飼育容器内に設置したシェルターへ移入する個体数の変化を比較し,以下の結果を得た。12L-12D, 25°C定温条件下では,摂食20日区は明瞭でなかったものの,羽化後10日以上の摂食の後,餌を除去されると間もなくシェルターに入る個体数が増加した。羽化後継続して摂食できる場合にはシェルター移入個体数が急激に増加することはなく,羽化後20日前後からシェルターに入る個体数がしだいに増加した。12L-12Dで,明期25°C,暗期10°Cの変温条件下では,20日以上の摂食の後,餌を除去されると間もなくシェルターに入る個体数が増加した。継続摂食区では羽化後40日前後からシェルターに入る個体数がしだいに増加した。20日以上摂食区では変温条件下のほうが定温条件下よりもシェルターに入った個体の割合が高かった。非休眠成虫を16L-8D,変温条件下で同様の実験を行った結果,いずれの区もシェルターに入る個体はほとんどなく,休眠成虫と対照的であった。
これらの結果から,野外において本種休眠成虫は羽化後の一定量の摂食の後,餌植物の枯死などの餌条件の悪化あるいは消失を契機として越冬場所へ移動し,定着するものと考えられた。また温度条件もこの行動に影響を及ぼしているものと考えられた。