日本応用動物昆虫学会誌
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カエデの生物季節とモミジニタイケアブラムシの春の産子
橋本 ほしみ古田 公人
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1988 年 32 巻 3 号 p. 169-175

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抄録

カエデに寄生するモミジニタイケアブラムシの産子と食物条件との関連を調べ,春における繁殖のあり方を考察した。
1) 世代に関係なく,展開していない葉上では非越夏型幼虫を,展開した葉上では越夏型幼虫を産下した。また,越夏型幼虫を産んだ個体でも,展開していない葉上に移せば非越夏型幼虫を産んだ。
2) 展開した葉上で育ったアブラムシは,産子数はきわめて少なく,展開した葉は,アブラムシの繁殖に適さない。
3) 未展開の葉は窒素含有率が高いが展開した葉は窒素含有率が低い。カエデの葉の窒素含有率の低下とアブラムシの越夏型幼虫の産下は,同時に引き起こされている。
4) 花序や新梢先端の若い葉は,窒素含有率が高く,好適な寄生場所となりうるが,窒素含有率の高い部位は,急速に消えていく。このため第2世代虫が非越夏型幼虫を産むためには,芽吹きの遅い木を求めて移動していくことは有効であると推測された。

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