日本応用動物昆虫学会誌
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ガンマ線の処理線量とウリミバエ雌の産卵管挿入行動
照屋 匡
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1990 年 34 巻 2 号 p. 97-103

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抄録
ガンマ線で照射されたウリミバエDacus cucurbitae成虫雌の,キュウリ果実に集まる(訪果)頻度および産卵管挿入行動をしている(挿入)頻度と線量との関係を室内試験で調べた。非照射雌では,いずれの頻度も第1週の終わりには上限に達し第6週までほぼ一定であった。照射雌の訪果頻度および挿入頻度は高い線量を受けたものほど低かったが,いずれの区でも加齢とともにしだいに高くなった。また,照射された線量と訪果頻度(v)に対する挿入頻度(p)の割合(p/v率)との関係においても同様な傾向がみられた。発育区分段階の低い卵巣の割合は,高い線量を受けたものほど高く,70Gy雌はまったく蔵卵しなかった。放飼不妊雌の野外における累積挿入頻度は,日当り生存率を0.85として推定すると,野生雌の1/200程度であった。ビニルハウス内の栽培キュウリに,挿入衝動の強い日齢の進んだ不妊雌を放したところ,種々の大きさの果実に対し非照射雌と同じ形状の刺傷をつけた。しかし,それが成熟果率に影響を及ぼすほどではなく,刺傷果率は小さい果実ほど低かった。したがって,ウリミバエでもsterile stingの存在は否定できないが,それがSITの障害になることはないであろう。
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