日本応用動物昆虫学会誌
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ミカンクロアブラムシの寄生蜂ミカンノアブラバチの発育と増殖能力
高梨 祐明
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1990 年 34 巻 3 号 p. 237-243

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抄録
ミカンクロアブラムシの寄生蜂ミカンノアブラバチLysiphlebus japonicus ASHMEADの成虫の生存日数,卵から成虫までの発育所要日数,卵巣発育様式,齢別生存率および齢別産卵数を種々の恒温条件下(16L-8D)で調査し,以下の結果を得た。
1) 成虫の生存日数は飼育温度の上昇にともなって短くなった。餌として蜂蜜を与えた場合と寄主が分泌した甘露を与えた場合では,生存日数に差は認められなかった。25°Cで寄主を与えた場合,与えなかった場合よりも雌成虫の生存日数は長かった。
2) 卵から成虫までの発育所要日数は飼育温度の上昇にともなって短縮されたが,25°Cより高い温度では発育は阻害された。
3) 成虫の齢別生存率は25°Cでは20°Cにおけるより急勾配で低下した。齢別産卵数はいずれの温度においても羽化後1日目に最も多くその後漸減したが,その勾配は25°Cでは20°Cにおけるより急であった。
4) 発育所要日数と齢別生存率および産卵数から算出した内的自然増加率(rm)は20°Cで0.243, 25°Cでは0.441であった。温度によるrmの差は,20°Cにおける大きい世代時間(T)と小さい純繁殖率(R0)の両方が起因した。
5) 成熟卵形成様式は逐次成熟型であり,成熟卵形成は羽化後急速に進行し,産卵によって促進された。
6) 寄主ミカンクロアブラムシの増殖能力との比較から,有翅型によるコロニー創設後初期に寄生蜂が攻撃を開始した場合に効果的な抑圧が期待された。
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