日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
温室栽培のハイドランジアを加害するチャノキイロアザミウマの生態
I. 温室への侵入経路と発生消長
栗山 和直真梶 徳純天野 洋
著者情報
ジャーナル フリー

1991 年 35 巻 1 号 p. 23-29

詳細
抄録

温室栽培の鉢物ハイドランジアにおけるチャノキイロアザミウマの発生生態について明らかにするため,侵入時期とその経路,および発生消長について調査した。
1) 栽培温室へのチャノキイロアザミウマの侵入は苗搬入時に苗とともに越冬個体が持ち込まれるものがおもなものであった。これらの持込み個体は頂芽内で越冬中の個体が大半を占め,それらは成虫・蛹・前蛹・老熟幼虫であった。
2) 温室の前作であるシクラメン等の花卉類への寄生もその密度によっては重要な発生源となる。しかし,野外から温室への飛翔による侵入はなかった。
3) 苗搬入時に持ち込まれた世代は出荷までに温室内で2世代を経過した。成虫は主に未展開葉に寄生し,そこに産卵する。寄主の生育とともに,産卵時の未展開葉は孵化時には展開葉となり,幼虫はそのままその葉上に寄生するので,寄生部位はハイドランジアの生育に伴って変化した。
4) 性比は0.67∼1.0の間にあり,持込み成虫では1.0に近く,第1世代成虫では雄の割合がわずかに増加した。
5) 以上の結果から,苗搬入前の防除がその後の発生を抑えるのに重要と考えられる。

著者関連情報
© 日本応用動物昆虫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top