日本応用動物昆虫学会誌
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昆虫培養細胞における核多角体病ウイルスの種特異性に関する研究
III. 核多角体病ウイルスの産生する2種類の感染性粒子,nonoccluded virusおよびoccluded virusの交差中和試験による血清学的比較
津田 勝男水城 英一河原 畑勇鮎沢 啓夫
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1991 年 35 巻 1 号 p. 31-37

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抄録

産生細胞の異なるB. mori NPVおよびX. c-nigrum NPVのNOV間で交差中和試験を行った。S. frugiperda細胞で産生されたNOV (TC)より調製された抗X. c-nigrum NPV NOV (TC)血清は,S.P.C. Bm 36細胞およびB. mori感染幼虫で産生されたB. mori NPVのNOVを同種抗原と同様に中和した。また,S.P.C. Bm 36細胞で産生されたNOV (TC)より調製された抗B. mori NPV NOV (TC)血清はS.P.C. Bm 36細胞およびS. frugiperda細胞で増殖させたX. c-nigrum NPVのいずれのNOVも同種抗原と同様に中和し,B. mori NPVの感染幼虫体液中NOV (IH)も同様に中和した。さらに,感染幼虫体液中NOV (IH)より調製された抗B. mori NPV NOV (IH)血清も同様に各NOVを中和した。これらのことより,類縁関係が遠いと考えられていたこれらのNPVのNOVには,培養細胞への感染に関与する共通抗原が存在することが認められたが,この共通抗原が産生細胞由来である可能性は低いと考えられた。
また,従来困難とされていたNPVのOVによるプラック形成に成功し,B. mori NPVのOVと各NPVのNOV間で交差中和試験を行った。B. mori NPVの抗OV血清は,同種抗原を強力に中和したが,NOVに対する中和作用はまったく見られなかった。しかし,抗B. mori NPVの抗NOV血清は,NOV (TC)およびNOV (IH)ともわずかにOVを中和し,B. mori NPVのNOVには,OVの感染に関与する抗原と共通の抗原がわずかながら存在していることが示唆された。一方,抗X. c-nigrum NPV NOV血清は,B. mori NPVのOVを中和しなかった。これらのことより,B. mori NPVのOVとX. c-nigrum NPVのNOVの間には,感染に関与する共通抗原が存在しないことが示唆された。

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