日本応用動物昆虫学会誌
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ワタアブラムシAphis gossypii (GLOVER)の薬剤抵抗性クローンの各種薬剤に対する感受性と協力剤の影響
西東 力浜 弘司鈴木 健
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1995 年 39 巻 2 号 p. 151-158

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抄録
ワタアブラムシの薬剤感受性クローン(1クローン)と薬剤抵抗性クローン(5クローン)について,有機リン剤(malathion, fenitrothion, dichlorvos, diazinon),カーバメート剤(carbaryl, methomyl),ピレスロイド剤(permethrin, fenvalerate),および有機塩素剤(DDT)に対する感受性を局所施用法によって検定した。さらに,各薬剤に対する抵抗性の発現機構をエステラーゼ阻害剤(K-2, DEF)と薬物酸化酵素阻害剤(PB, S-421)を用いて検討した。
1) 抵抗性クローンはいずれも各有機リン剤に対して数倍∼数十倍の抵抗性比を示し,有機リン剤抵抗性は互いに交差関係にあるものと考えられた。
2) 抵抗性クローンはcarbarylとmethomylに対して最大約70倍の抵抗性比を示したが,pirimicarbに対しては数千倍の抵抗性比を示し,カーバメート剤では抵抗性発達の程度が薬剤によって大きく違っていた。
3) 抵抗性クローンのうち1クローンで,permethrinに対して数千倍,fenvalerateに対して1万数千倍に達する高度の抵抗性比が検出された。他のクローンのこれらピレスロイド剤に対する抵抗性比はいずれも小さかった。このことから,これらピレスロイド剤に対する抵抗性は互いに交差していること,有機リン剤とピレスロイド剤抵抗性とは交差していないことが考えられた。
4) 各クローンのアリエステラーゼ活性は有機リン剤に対する抵抗性比と平行関係にあり,またエステラーゼ阻害剤は有機リン剤に対して最大250の協力作用係数を示した。このことから,エステラーゼは有機リン剤抵抗性の主要な発現機構となっているものと考えられた。
5) エステラーゼ阻害剤と薬物酸化酵素阻害剤はカーバメート剤(carbaryl, methomyl)に対してそれぞれ最大で430と914の協力作用係数を示した。このことから,これら二つのカーバメート剤抵抗性はエステラーゼや薬物酸化酵素が関与する解毒活性の増大に起因するものと考えられた。
6) エステラーゼ阻害剤と薬物酸化酵素阻害剤のピレスロイド剤に対する協力作用係数は最大199にとどまった。このことから,ピレスロイド剤抵抗性の発現には解毒酵素とは異なる別の要因の存在が考えられた。
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