日本応用動物昆虫学会誌
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39 巻, 2 号
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  • 阿部 芳彦, 三代 浩二, 高梨 祐明
    1995 年 39 巻 2 号 p. 109-115
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    チャバネアオカメムシの中腸後端部の胃盲嚢群に共生細菌を見いだし,この部位がmycetomeであることを確認した。mycetomeは中腸の一部が風船状に膨脹した形を示し,上皮細胞の細胞質に共生細菌の増殖が認められた。共生細菌はmycetomeである上皮細胞の崩壊・脱落によりmycetome腔に放出され,中腸腔と連絡する小孔を通じて中腸腔へ排出された。チャバネアオカメムシ成虫の排泄物には共生細菌が含まれており,これが産卵時に卵面に付着し孵化幼虫に摂取されて次世代へ伝達されることが示された。mycetomeではビタミンA1またはカロチンおよびビタミンEの反応が認められた.共生細菌の次世代への伝達は殺菌剤などによる卵面消毒によって阻害され,これによって孵化幼虫のその後の発育が著しく停滞した。また卵面へのSerratia属様細菌の塗布によって孵化後の幼虫は早期に死亡した。
  • 第4報 各クローン系統の各種薬剤に対する感受性
    浜 弘司, 安藤 幸夫, 細田 昭男, 鈴木 健, 高木 豊
    1995 年 39 巻 2 号 p. 117-125
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ワタアブラムシの有機リン剤抵抗性の指標であるアリエステラーゼ活性を目安に,クローン化した4系統を用い,各種薬剤に対する感受性を虫体浸漬法により検定し,本種の有機リン剤とカーバメート剤に対する抵抗性の特徴を明らかにした。
    1) 供試虫を薬液に浸漬し,浸漬に使用した容器から新しい容器に移した区(移し替え区)のLC50値は,浸漬に使用した容器にそのまま保持した区(標準区)のLC50値より数倍から10倍以上大きかった。しかし,各薬剤間の感受性は2試験法で平行した。
    2) 感受性Sクローンの有機リン剤に対する感受性は薬剤間で異なったが,chlorpyrifos-methyl (Reldan®), phosalone (Rubitox®), profenofos (Encedan®)に対してとくに高かった。
    3) 抵抗性クローンの有機リン剤に対する抵抗性比は数倍から数十倍であったが,とくにthiometon (Ekatin®), oxydeprofos (ESP), phosalone (Encedan®)に対する抵抗性比は高かった。
    4) Chlorpyrifos-methyl (Reldan®), profenofos (Encedan®)の殺虫活性は抵抗性クローンに対し高かったが,これらの有機リン剤に対しても数倍から数10倍の抵抗性を示した。
    5) 有機リン剤抵抗性クローンのカーバメート剤感受性は,薬剤によって大きく異なり,ethiofencarb, pirimicarbに対し高度の抵抗性を示したが,carbaryl (NAC)やmethomylに対する抵抗性は低かった。なお,ピレスロイド剤に対する感受性は高かった。
    6) 有機リン剤抵抗性クローンに対して,有機リン剤とカーバメート剤のある組み合わせで混合した場合に協力作用が確認された。
  • 西東 力, 大石 剛裕, 小澤 朗人, 池田 二三高
    1995 年 39 巻 2 号 p. 127-134
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    マメハモグリバエLiriomyza trifolii (BURGESS)の発育と産卵に対する温度,日長,寄主植物の影響を実験室内で調べた。
    1) インゲンマメにおける発育速度(Y)と温度(X)の回帰式は,卵でY=0.0191X-0.1531,幼虫でY=0.0155X-0.1380,蛹でY=0.0070X-0.0710となった。これらの回帰式から,発育零点は卵で8.0°C,幼虫で8.9°C,蛹で10.1°Cと推定された。
    2) 発育適温は25∼30°Cの範囲,発育上限温度は35°C付近にあると考えられる。
    3) 卵,幼虫,および蛹の各発育期間は日長条件の影響を受けなかった。この場合,低温(15°C)・短日(8L-16D)条件によって発育遅延が起こらなかったことから,本種は冬季,休眠しないものと考えられる。
    4) 各日長条件(24D, 8L-16D, 16L-8D, 24L)下において雌成虫の摂食痕数と産卵数は明期が長くなるにしたがって増加したが,明期1時間当たりの摂食痕数および産卵数には大差がなかった。暗期には摂食と産卵がほとんど行われなかった。
    5) 卵∼幼虫期間は,インゲンマメで6.5日,チンゲンサイで7.0日,ナスで7.2日,ガーベラとミニトマトで7.9日,キュウリで8.1日,トマトとセルリーで8.3日,ダイズで8.5日,メロンで8.7日,キクで9.7日であった。
    6) 蛹重は,インゲンマメ(0.53mg)やチンゲンサイ(0.52mg)などで比較的大きく,メロン(0.35mg),キュウリ(0.36mg),ガーベラ(0.36mg),ダイズ(0.37mg)などで比較的小さかった。
    7) 1雌当たりの総産卵数は,チンゲンサイで637.7個,インゲンマメで540.3個,キクで208.8個,セルリーで205.6個,ガーベラで156.4個,メロンで108.0個,ミニトマトで75.6個,トマトで54.7個,ダイズで21.1個であった。
  • 浅野 昌司, 鈴木 伸和
    1995 年 39 巻 2 号 p. 135-141
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Bacillus thuringiensis (BT)製剤の害虫に対する生物活性の評価は目的の種類毎にそれに適した方法を考えることが大切である。BT製剤のひとつのKM301水和剤を用いてハスモンヨトウに対する生物活性を人工飼料に混入する方法で調べた。死亡個体は幼虫を投与1∼2日後から現われ,その後致死率は急激に上昇したが,4∼5日後にはほぼ平衡に達した。時間-致死率曲線は濃度によって異なるが,放飼した幼虫齢期の間では感受性の程度を除けばほぼ同様な軌跡を描いた。BT製剤に対する感受性は1齢幼虫が最も高く,次いで2齢幼虫で,3∼5齢幼虫ではほぼ同程度であった。致死濃度以下の投与でも幼虫発育抑制は認められた。投与7日後の相対体重増加率から求めたEC50は致死率から求めたLC50の約1/5であった。1齢幼虫の感受性は検定日間で異なるが同じ検定日の卵塊間でも大きく異なることが分かった。感受性に対する試験温度の影響は20∼30°Cの区では特に認められなかったが,15°Cでの感受性は他の温度区の約2倍になった。
    これらの結果から,飼料混入法によるBT製剤のハスモンヨトウに対する生物検定では供試虫は複数の卵塊からのふ化幼虫を混合して用い,温度25°Cにおける投与7日後の致死率からのLC50か,体重増加比からのEC50で評価できることが明らかにできた。
  • 野里 和雄
    1995 年 39 巻 2 号 p. 143-149
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1992年から1994年にブッソウゲで発生するワタアブラムシの発生地域,発生消長及び作物での増殖について調べた。
    1. 暖地の数県(沖縄県,鹿児島県,宮崎県,高知県及び和歌山県)ではブッソウゲでワタアブラムシが発生していた。
    2. 晩秋ヤブガラシで発生した有翅型成虫をブッソウゲに移すと一部の個体は産子を初め,その後も個体数は増加した。
    3. ワタアブラムシはブッソウゲで12月から翌年5月まで多数発生し,その間多数の有翅型成虫が出現した。
    4. ブッソウゲで発生した有翅型成虫は4月下旬から5月中旬にかけてキュウリ,ナス及びウンシュウミカンで増殖することができるので,暖地においてはこれらの作物では被害を受けるから注意が必要である。
    5. 5月にブッソウゲで発生した有翅型成虫はヤブガラシに移って増殖することができるので,これらのワタアブラムシはヤブガラシで5月から11月まで発生すると思われる。
  • 西東 力, 浜 弘司, 鈴木 健
    1995 年 39 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ワタアブラムシの薬剤感受性クローン(1クローン)と薬剤抵抗性クローン(5クローン)について,有機リン剤(malathion, fenitrothion, dichlorvos, diazinon),カーバメート剤(carbaryl, methomyl),ピレスロイド剤(permethrin, fenvalerate),および有機塩素剤(DDT)に対する感受性を局所施用法によって検定した。さらに,各薬剤に対する抵抗性の発現機構をエステラーゼ阻害剤(K-2, DEF)と薬物酸化酵素阻害剤(PB, S-421)を用いて検討した。
    1) 抵抗性クローンはいずれも各有機リン剤に対して数倍∼数十倍の抵抗性比を示し,有機リン剤抵抗性は互いに交差関係にあるものと考えられた。
    2) 抵抗性クローンはcarbarylとmethomylに対して最大約70倍の抵抗性比を示したが,pirimicarbに対しては数千倍の抵抗性比を示し,カーバメート剤では抵抗性発達の程度が薬剤によって大きく違っていた。
    3) 抵抗性クローンのうち1クローンで,permethrinに対して数千倍,fenvalerateに対して1万数千倍に達する高度の抵抗性比が検出された。他のクローンのこれらピレスロイド剤に対する抵抗性比はいずれも小さかった。このことから,これらピレスロイド剤に対する抵抗性は互いに交差していること,有機リン剤とピレスロイド剤抵抗性とは交差していないことが考えられた。
    4) 各クローンのアリエステラーゼ活性は有機リン剤に対する抵抗性比と平行関係にあり,またエステラーゼ阻害剤は有機リン剤に対して最大250の協力作用係数を示した。このことから,エステラーゼは有機リン剤抵抗性の主要な発現機構となっているものと考えられた。
    5) エステラーゼ阻害剤と薬物酸化酵素阻害剤はカーバメート剤(carbaryl, methomyl)に対してそれぞれ最大で430と914の協力作用係数を示した。このことから,これら二つのカーバメート剤抵抗性はエステラーゼや薬物酸化酵素が関与する解毒活性の増大に起因するものと考えられた。
    6) エステラーゼ阻害剤と薬物酸化酵素阻害剤のピレスロイド剤に対する協力作用係数は最大199にとどまった。このことから,ピレスロイド剤抵抗性の発現には解毒酵素とは異なる別の要因の存在が考えられた。
  • II. 非寄主(スギ)で発育したカヤレースの形態
    宮ノ下 明大, 田付 貞洋
    1995 年 39 巻 2 号 p. 159-162
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Our previous work showed that Cryptomeria japonica D. DON feeders and Torreya nucifera SIEB. et ZUCC. feeders of Aspidiotus cryptomeriae KUWANA are separate host races due to distinct morphological characters and virtually monophagous feeding habits. However, in the present work some A. cryptomeriae crawlers of the T. nucifera feeding race, which had been experimentally transferred to the non-host plant, C. japonica, grew to adults. The morphological characters of the C. japonica (non host) feeding T. nucifera race of A. cryptomeriae females were compared to those of the T. nucifera feeding T. nucifera race to examine whether the host plant had any effect on morphological characters. The two populations of A. cryptomeriae were reared under the same conditions except for the host plant. There were no significant differences between them for five morphological characters (p>0.05, t-test) except for pygidium length. Linear discriminant analysis using two characters (anal location and dorsal macroduct length) showed that the T. nucifera feeding race reared on C. japonica kept their normal morphological characters. Furthermore, eggs layed on the non-host plant by the adult A. cryptomeriae females reared on the non-host plant did not hatch. These results strongly suggest that the T. nucifera feeding race has very stable morphology that is not affected by the host plant. Even when A. cryptomeriae crawlers develop to the adult stage on non-host plants, they may not reproduce the next generation.
  • 金子 順一, 小西 和彦
    1995 年 39 巻 2 号 p. 162-164
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Gregopimpla kuwanae was the most common parasitoid of cocoons of the silver Y moth. Other less common parasitoids were: Ephialtes capurifera, Acropimpla pictipes, Coccygomimus instigator, C. pluto, Scambus planatus, Scambus sp. Itoplectis alternans spectabilis, Netelia sp. (Ichneumonids), Copidosoma floridanum (Encyrtid), Phryxe vulgaris, Winthemia cruentata, Nemorilla floralis (Diptera, Calcidoidea). The rate of parasitism of cocoons was about 70%. In several cases, two species of parasitoid parasitized the same individual.
  • 広瀬 拓也
    1995 年 39 巻 2 号 p. 165-167
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 篠川 貴司
    1995 年 39 巻 2 号 p. 168-170
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The tadpole shrimp, Triops longicaudatus, was found in several rice paddies in Kochi Prefecture. Annual fluctuation in its occurrence is due to loss of floating eggs by occasional overflow of paddy water.
  • 曽根 信三郎, 山田 ゆみ, 坪井 真一
    1995 年 39 巻 2 号 p. 171-173
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ウンカ・ヨコバイ類に対する殺虫剤の新しいスクリーニング法としてST法(Seedling Treatment method)を考案した。ST法は,透明容器中に稲の芽出し苗を生育させ,これにスプレーガンで薬剤を散布し,容器内に虫を放飼して継続的に薬効を観察できる方法である。ST法では,薬剤処理の簡便さはもとより,寄主植物の維持と供試昆虫の取り扱いの簡便さにより,また,諸種・齢期の供試昆虫を用いることにより,多数の,また多様な作用性を持つ薬剤の効力を効率的に評価することができた。このST法により,活性物質の選抜,作用性の解明が容易になると考えられる。
  • 鄭 晋教, 金 哲史, 堀池 道郎, 平野 千里
    1995 年 39 巻 2 号 p. 174-176
    発行日: 1995/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    An oligosaccharide was isolated from honeydew excreted by Nephotettix cincticeps. It was identified as melezitose based on HPLC retention times, qualitative and quantitative profiles of products formed by HCl hydrolysis, hydrolytic responses to invertase, α-and β-glucosidases, and 13C-NMR spectra.
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