抄録
は種期の種々異なる水稲品種シロガネおよび農林8号で第2化期イネカラバエ幼虫の発育状態を観察したところ,は種期が早く幼穂が発達伸長しつつある稲では幼虫は非常に良好な生育を遂げ,または種期の著しくおそい若稲でも不斉ではあったがかなりの割合が良好な生育を示した。しかるに両者の中間の生育状態を示す稲では幼虫の発育は全般的に不良になることがわかった。この全般的発育抑制の始まる時期はシロガネでは第10葉期ごろすなわち栄養成長期の後期ごろであったが,年によって若干の変動がみられた。
この事実はイネカラバエの発生生態と密接な関係を有し,本虫の3化地帯においては一般に第2化期は第1化期よりも全発育期間が長いこと,2化地帯では幼虫は幼穂摂食前は目だった成長をしないことや,2, 3化混発地帯の発生生態の特異性などの原因の一部に上記の原理が関係しているほか,晩生品種は抵抗性が弱くても傷穂が出にくく,早生品種では抵抗性は弱くなくても傷穂率が高くなることについても上記の原理で考察できた。
なお,外国稲Bombarでは上記のような稲の生育段階と幼虫発育の関係がめいりょうでなく,どのような生育時期の稲でも良好な発育がみられた。したがってこの品種はイネカラバエに対する感受性が著しく高いというべきであるが,このことから上述の関係はpatternは共通でも細部の時期的関係には品種その他の条件によって多少の相異が予想される。