日本応用動物昆虫学会誌
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タマナギンウワバおよびその近似種(ヤガ科)の生態に関する研究
III. タマナギンウワバの発育と体色に及ぼす温度の影響
一瀬 太良
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1960 年 4 巻 1 号 p. 26-30_1

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抄録
タマナギンウワバさなぎの体重と,幼虫およびさなぎの期間中の死亡率とに及ぼす温度の影響を検討し,また幼虫およびさなぎの色と温度との関係を調べた。飼育は25°Cおよび30°Cの恒温と,種々の室温下で行ない,20頭前後の集合飼育と単独飼育とを併用した。
1) さなぎの体重は供試した2種の食飼植物,キャベツ,アブラナによって大差なく,またそれぞれ雌雄間において有意差をみとめえなかった(第1表)。
2) さなぎの平均体重は温度の相違によってほとんど変わらないが,高温30°Cにおいて非常に小さい個体が得られ,体重の減少する傾向がみられた(第1表)。
3) 集合飼育区の平均さなぎ体重は単独飼育区のそれに比べてわずかに小さな数字を示したが有意差は認められなかった(第2表)。
4) 一般に30°Cでは死亡率がより高くなり,特によう期に死ぬ個体が多い。25°Cでは,その他の条件のよいときはきわめて羽化率が高かった(第3表)。5) 本種では,幼虫の表皮に見られる色の変異すなわち黒化の程度は,温度や飼育密度に対し特にめいりょうな関係を示さない。
6) さなぎの色は表皮の黒化の程度によってきまり,幼虫期の温度に支配される。高温30°Cで全部黄かっ色となり,低温20°C以下で全部黒色,25°Cで中間的色調となる(第4表,第1図)。
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