日本応用動物昆虫学会誌
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施設ガーベラのマメハモグリバエに対する土着天敵の働きと農薬の影響
大野 和朗大森 隆嶽本 弘之
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1999 年 43 巻 2 号 p. 81-86

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抄録

土着天敵の働きを明らかにするため,福岡県内のガーベラ施設でマメハモグリバエ成虫の発生消長を黄色粘着トラップでモニターするとともに,潜孔内のマメハモグリバエ幼虫の解剖により,死亡要因を特定し,齢別死亡率ならびに齢別寄生率を求めた.ガーベラ被害葉からはヒメコバチ科の3属6種が得られ,Neochrysocharis formosaChrysocharia pentheusが優占種であり,Diglyphus albiscapusがこれに次いだ.定期的なサンプリング調査から,非選択的農薬が散布された慣行防除施設では土着天敵による寄生率は極めて低く,土着天敵の活動は農薬散布に大きく影響されることが明らかとなった.一方,農薬散布を数ヵ月間中断した施設では,マメハモグリバエ個体群の増加がみられたが,時間とともに土着天敵による寄生率も上昇した.また,寄生率の増加とともに,寄生以外の要因によるマメハモグリバエ幼虫の死亡率が増加する例も認められ,その原因として土着天敵による寄主体液摂取が考えられた.天敵の働きが顕著であった下広川の6月上旬では,2齢幼虫期ならびに3齢幼虫期に高い割合で死亡幼虫や被寄生幼虫が認められ,各齢期での生存率は20∼40%と低かった.以上の結果から,土着天敵による寄生ならびに寄主体液摂取がマメハモグリバエ個体群の死亡要因として大きいことが示唆された.

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