日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
卵寄生蜂カメムシタマゴトビコバチの2種寄主卵に対する反応の差異
水谷 信夫国見 裕久
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 43 巻 2 号 p. 87-92

詳細
抄録

卵寄生蜂カメムシタマゴトビコバチのホソヘリカメムシ卵とイチモンジカメムシ卵塊に対する反応とこれら寄主卵から羽化した蜂の発育と繁殖に関わる諸形質を比較し,以下の点を明らかにした.
1) カメムシタマゴトビコバチは,ホソヘリカメムシ卵には80%以上,イチモンジカメムシ卵塊には60%以下の雌蜂が産卵し,産卵を開始するまでの時間は,ホソヘリカメムシに比ベイチモンジカメムシで有意に長かった.2種カメムシ卵を同時に与えた場合,ホソヘリカメムシに先に産卵する雌蜂が多かった.以上の点から,本寄生蜂は寄主としてイチモンジカメムシよりもホソヘリカメムシを好み,選好性の差がダイズ圃場での寄生率の差をもたらす要因の一つと考えられた.このホソヘリカメムシに対する選好性は生得的であり,本寄生蜂をイチモンジカメムシで数世代継代しても産卵率は変化しなかった.
2) ホソヘリカメムシではイチモンジカメムシに比べ,カメムシタマゴトビコバチの子の死亡率が低く,羽化した蜂の寿命が長く,蔵卵数が多く,それぞれ有意な差が認められた.これらの結果から,本寄生蜂のホソヘリカメムシに対する選好性は,子の生存率および繁殖成功度と関連した適応的な行動であると考えられた.

著者関連情報
© 日本応用動物昆虫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top