2013 年 16 巻 2 号 p. 31-36
本研究の目的は,地域在住高齢者の床からの立ち上がり動作に要する時間と身体機能との関係について,前期高齢者と後期高齢者別に検討することである.方法は,前期高齢者82人および後期高齢者79人を対象に,立ち上がり所要時間,上下肢・体幹の筋力,柔軟性,立位バランス,歩行能力を評価した.前期・後期高齢者別に各種身体機能を比較した後,立ち上がり所要時間と各種身体機能との関連を検討した.その結果,後期高齢者の各種身体機能は,前期高齢者より劣っていることが示された.また重回帰分析の結果から,前期高齢者は,体幹筋力や立位バランスが高い者ほど,床から速く立ち上がることができるという関係が認められた.一方,後期高齢者が床から速く立ち上がるためには,筋力やバランス能力といった個々の身体機能を高めるというよりも,動的バランスとそれに必要な下肢筋力や協調性などを総合的に高める必要性が示唆された.