2016 年 19 巻 2 号 p. 42-50
本研究では,地方の中核都市である中国徐州市に在住の高齢者を対象に,先行研究で着目されてこなかった家族規範と介護サービスに関する意識および子どもの特性に着目し,介護サービスの利用希望に関連する要因を解明する.調査対象は当該市の市区部に居住する60 歳以上の住民であり,調査方法は調査票を用いた訪問面接聴取法であった.回答数は206 人であった.分析モデルは,従属変数には,介護が必要となった場合「家族介護のみ」「家族介護と在宅サービス両方」「在宅サービスのみ」「施設入所」のいずれを選択するか,独立変数には,家族規範と介護サービスに関する意識要因および子どもの要因に加えて,基本属性,健康要因,社会的要因(階層要因,世帯構成)を位置づけた.分析方法は多項ロジスティック回帰分析であった.「家族介護のみ」を基準とした場合,就学年数が長い人や子どもの数が多い人では,「在宅サービスのみ」の希望が有意に強かった.子どもの居宅との距離が長い人や「ひとり暮らし」の人では,「施設入所」の希望が有意に強かった.意識要因の影響については,伝統的家族規範が強い人や対人的抵抗感が強い人では,「在宅サービスのみ」と「施設入所」の希望が有意に弱く,制度への抵抗感が強い人では「家族介護と在宅サービス両方」の希望が有意に弱かった.