日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
19 巻, 2 号
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目次
巻頭言
第20回日本在宅ケア学会学術集会
会長講演
シンポジウムⅡ
地域包括ケア時代の多職種連携
総説
  • 石原 孝子, 岡部 明子
    原稿種別: 総説
    2016 年19 巻2 号 p. 24-33
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,在宅療養児の通常学校における医療的ケアの研究動向を明らかにし,現在の医療的ケアに対する問題および今後の課題を検討することを目的とした.「医学中央雑誌Web Ver.5」「CiNii」「JDream Ⅲ」「国立国会図書館サーチ」の4 つのデータベースおよびハンドサーチにより,「子ども」「医療的ケア」「通常学校」の3 つにそれぞれ関連するキーワードをもれなく検索し,110 件を抽出した.絞り込みと精読により最終的に17 件を分析対象とした.対象は小学生がもっとも多く,内容は支援体制やニーズに関する実態把握,教育にかかわる問題の明確化,多職種協働の実態把握,医療的ケアにかかわる職種の認識把握が多数を占めた.通常学校への受け入れは自治体によるばらつきが大きく,学校選択の幅を広げることや既存の制度活用も視野に入れた医療的ケア提供者の継続的確保,医療・教育・福祉の包括的支援,児童のセルフケア促進支援が課題であることが示唆された.

研究
  • 川村 みどり, 浅見 洋, 塚田 久恵, 北岡 和代, 河村 一海, 長田 恭子, 森岡 広美
    原稿種別: 研究
    2016 年19 巻2 号 p. 34-41
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    目的:特別養護老人ホームの介護職員の背景要因が,施設での看取りへの考えや不安・態度に影響する要因だと明らかにすることであった.

    方法:石川県の特養の介護職員320 人に,郵送式無記名自記式質問紙調査を実施した.施設での看取りへの考えと不安は独自の調査票で,態度はFATCOD-B-J で測定した.

    結果:226 通を回収した(回収率70.6%).介護職員の74.8%は現施設での看取りを経験した.近親者の看取り経験者や施設での看取り経験者は,施設での看取りに肯定的であった(p < .01 とp < .001).近親者や現施設の看取り経験者は,看取りへの態度が積極的であった(p < .05 とp < .001).施設での看取りの不安は,年長者は夜間の医師不在(p < .05)など,現施設の勤務が長い者は個室の少なさ(p < .001)を挙げた.

    結論:施設での看取りの質の改善には,介護職員の要因に応じた看取りへの不安の解消が必要である.

  • 牛 嘯塵, 杉澤 秀博
    原稿種別: 研究
    2016 年19 巻2 号 p. 42-50
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,地方の中核都市である中国徐州市に在住の高齢者を対象に,先行研究で着目されてこなかった家族規範と介護サービスに関する意識および子どもの特性に着目し,介護サービスの利用希望に関連する要因を解明する.調査対象は当該市の市区部に居住する60 歳以上の住民であり,調査方法は調査票を用いた訪問面接聴取法であった.回答数は206 人であった.分析モデルは,従属変数には,介護が必要となった場合「家族介護のみ」「家族介護と在宅サービス両方」「在宅サービスのみ」「施設入所」のいずれを選択するか,独立変数には,家族規範と介護サービスに関する意識要因および子どもの要因に加えて,基本属性,健康要因,社会的要因(階層要因,世帯構成)を位置づけた.分析方法は多項ロジスティック回帰分析であった.「家族介護のみ」を基準とした場合,就学年数が長い人や子どもの数が多い人では,「在宅サービスのみ」の希望が有意に強かった.子どもの居宅との距離が長い人や「ひとり暮らし」の人では,「施設入所」の希望が有意に強かった.意識要因の影響については,伝統的家族規範が強い人や対人的抵抗感が強い人では,「在宅サービスのみ」と「施設入所」の希望が有意に弱く,制度への抵抗感が強い人では「家族介護と在宅サービス両方」の希望が有意に弱かった.

  • 西田 志穂, 西田 和子
    原稿種別: 研究
    2016 年19 巻2 号 p. 51-58
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,新人訪問看護師の職業アイデンティティに関連する要因を明らかにすることを目的とした.九州4 県内の新人訪問看護師を対象に,自記式質問紙による調査を実施し,135 人を分析対象とした.調査内容は,個人的要因(属性,離職意向の有無,燃え尽き状態など),職務環境的要因(勤務形態,研修の受けやすさ,職務満足感,情緒的支援ネットワークなど)であった.ステップワイズ重回帰分析を用いて職業アイデンティティの関連要因を検討した.その結果,新人訪問看護師の職業アイデンティティには,職務満足感,離職意向が関連していた.両要因には,研修の受けやすさ,休暇のとりやすさ,燃え尽き状態が,職務満足感には,情緒的支援ネットワークが関連していた.職業アイデンティティの形成には,研修などの知識や技術を高める機会があること,ワークライフバランスを尊重した勤務調整,支援し合える良好な職場内の対人関係が影響することが示唆された.

  • 今西 美由紀, 友久 久雄, 日垣 一男
    原稿種別: 研究
    2016 年19 巻2 号 p. 59-66
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅ケアサービス(以下,サービス)利用開始時における高齢者の主観的幸福感に影響を及ぼす要因を明らかにし,それを向上させるサービスの留意点を検討することである.その方法として高齢者200 人に対しPGC モラール・スケールを用いて質問紙調査およびサービスへの思いを聴取するインタビューを実施した.

     その結果,「在宅ケアサービスの利用に至った経緯」および「同居家族の構成」の2 要因が高齢者の主観的幸福感に影響を及ぼす要因として抽出された.また,主観的幸福感は,退院直後にサービスを利用する高齢者が低く,三世帯で暮らす高齢者は高かった.

     高齢者が抱く不安は,在宅ケアサービスに対するものでもある.スタッフは,高齢者の複雑な思いをくみ取り,サービスにあたる必要がある.

資料
  • 井上 高博, 山口 善子, 増田 容子
    原稿種別: 資料
    2016 年19 巻2 号 p. 67-75
    発行日: 2016年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    要支援1 および2 高齢者における日常生活状況の差異について明らかにし,異なる生活状況に応じた具体的な支援内容を示すことである.【対象】長崎県内13 市町の地域包括支援センター専門職者がかかわっている要支援高齢者800 人であった.【方法】生活実態30 項目を作成するために,要支援高齢者17 人ならびに地域包括支援センター専門職21 人に聞き取り調査を行った.その内容妥当性を検証したのちに,横断調査を行い,各項目の判定基準における要支援度別の差異を確認した.【結果】生活実態30 項目すべての判定基準において該当者を確認した.また,各項目の判定基準における要支援度別の有意な違いは30 項目中18 項目に確認した.【結論】要支援1・2 高齢者における日常生活状況に応じた支援内容の差異として, ① 室内移動や屋外移動といった移動に関する違い,②自宅での入浴状況の違いが明らかになった.

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