2021 年 24 巻 2 号 p. 60-66
研究の目的は,軽度アルツハイマー型認知症(以下,軽度AD)と診断を受けて地域で暮らす高齢者が,暮らしのなかで感じてきた思いの特徴を明らかにすることである.
軽度ADの高齢者7人を対象に,診断後から1年以内とさらに1年が経過した後に2回の半構造化面接を行い,暮らしで感じている思いをたずねた.分析方法は,語りを質的記述的に分析し,初回と2回目のカテゴリーの同質性と異質性を検討した.
軽度ADと診断を受けた高齢者の思いの語りから,【認知症になったことを自覚しているが故の苦悩】【家族への一喜一憂する感情】【人付き合いへの不安】【住み慣れた地域での自分らしい暮らしの希望】の4つのカテゴリーが得られた.
軽度ADの高齢者は,認知症になったことへの苦悩があっても,住み慣れた地域で暮らしたいという思いを1年後も持ち続けていることが推察された.