日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
原著
筋萎縮性側索硬化症患者を介護する家族の介護負担感に関する研究―介護負担感の特徴と関連要因―
小長谷 百絵
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2001 年 5 巻 1 号 p. 34-41

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抄録

在宅ALS患者を介護する家族の介護負担感への関連因子を検討するために,主たる介護者を対象に自記式の郵送調査を行い,328名の分析を行った.その結果,ALS患者を介護する家族の多くは女性(74.1%)で,平均年齢は56.7±10.9歳と若く,続柄1は配偶者が83.2%であった.家族の介護負担感は高く,因子分析結果より「精神的疲弊」「予期的な不安」「前向きな介護姿勢」の3つの特徴が示された,介護負担感得点は「介護者が高齢群」「介護者が男性」「介護代替者がいる群」「1日の世話時間が長い群」「経済的余裕感がない群」「介護者が無職群」が有意に高かった(p<0.05).介護負担感得点を従属変数とする数量化Ⅰ類による分析の結果,最も強く影響を及ぼしていたものは「介護者の年齢」,次いで「介護代替者の有無」「1日の世話時間」「経済的余裕感」の順で,介護者の年齢が高いこと,介護代替者が存在してもなお1日の世話時間が長いこと,経済的余裕感がないことが,介護負担感を高める方向に作用していた.

以上の結果から介護者が高齢で経済的困窮感を持ち,介護のために1日のほとんどを患者のそばで過ごす場合,特に介護負担感が強いと判断し,看護職者は介護者に危機の予測と回避に向けて予防的なケアを行う必要があることが示された.

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© 2001 一般社団法人日本在宅ケア学会
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