本研究は地域住民の受診病院とその病院に対する満足度,期待度に影響を与える要因を明らかにするために,地方にあるA市の地域住民で受診している394人に自記式質問紙による調査を行った.主成分分析により,満足度では「医師」,「看護職」,「職員の対応」,「建物・設備」,「利便性」,「オプショナルサービス」の6因子が抽出された.病院に対する期待度は「看護職・職員の対応」,「建物設備・利便性」,「医師の診療」,「その他」の4因子であった.これらは高い内的整合性を示した(クロンバックα係数,満足度22項目で0.92,期待度22項目に関しては0.84).
満足度,期待度の各因子別得点和を目的変数とし,受診病院や住民の背景条件を説明変数に重回帰分析を行った結果,近くのA病院に受診する者は「利便性」の満足度と正の相関があり,他の満足度とは負の相関がみられた.また会社員は「職員の対応」,「建物・設備」,「利便性」の満足度との間に,男性や車を運転する者も各満足度問に負の相関傾向にあった.単回帰分析の結果,年齢は満足度,期待度のいくつかの因子間に正の相関がみられた.これより,受診病院名,職業,性別,住所,運転の有無,年齢は受診病院の満足度を,年齢は期待度を規定する要因であると考えられた.
また,住民に近いところにあるA病院の主な受診者は高齢で運転できない女性であり,若い会社員で運転できる者は市外の病院に受診する傾向がみられた.これらの住民の背景条件は受診病院を決定する要因であるといえる.