日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
5 巻, 1 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
目次
焦点1
焦点2:介護保険の課題と展望
原著
  • 宮島 朝子
    原稿種別: 原著
    2001 年5 巻1 号 p. 20-26
    発行日: 2001年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,H県下4市町に在住する在宅療養者51名を対象に,睡眠の状況と長時間就床の要因を把握するとともに,その要因による療養生活への影響を明らかにすることを目的に行った.その結果,以下の結論を得た.

    1)在宅療養者の睡眠は,健康な高齢者に比べて就寝時刻が早く起床時刻が遅く,総就床時間は長くなっていた.平均総就床時間が9時間を越える療養者は21名おり,最も長い者は13時間30分であった.

    2)長時間就床の要因として,生活自立度が低いことと,夫婦世帯であることが考えられた.

    3)自立度の低い療養者は,夜間,トイレよりも寝室で排泄する者が多く,入浴は自宅浴室よりもデイサービスを利用する者が多くなっていた.

    4)自立度が低いことによって排泄や清潔などの日常生活行動の場が変化しており,そのことが居住環境に対する満足感の低さにつながっていると推察された.

    これらの結果を踏まえ,療養者が長時間就床に至らないよう,早朝に訪問して起床を促し,睡眠状況を把握して適切に指導すること,居住環境を改善したり,日中の活動量を増やすために住居内外の行動範囲を広げ外出の機会を増やすことを,療養の早い段階から提言していく必要がある.

  • 内田 陽子
    原稿種別: 原著
    2001 年5 巻1 号 p. 27-33
    発行日: 2001年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は地域住民の受診病院とその病院に対する満足度,期待度に影響を与える要因を明らかにするために,地方にあるA市の地域住民で受診している394人に自記式質問紙による調査を行った.主成分分析により,満足度では「医師」,「看護職」,「職員の対応」,「建物・設備」,「利便性」,「オプショナルサービス」の6因子が抽出された.病院に対する期待度は「看護職・職員の対応」,「建物設備・利便性」,「医師の診療」,「その他」の4因子であった.これらは高い内的整合性を示した(クロンバックα係数,満足度22項目で0.92,期待度22項目に関しては0.84).

    満足度,期待度の各因子別得点和を目的変数とし,受診病院や住民の背景条件を説明変数に重回帰分析を行った結果,近くのA病院に受診する者は「利便性」の満足度と正の相関があり,他の満足度とは負の相関がみられた.また会社員は「職員の対応」,「建物・設備」,「利便性」の満足度との間に,男性や車を運転する者も各満足度問に負の相関傾向にあった.単回帰分析の結果,年齢は満足度,期待度のいくつかの因子間に正の相関がみられた.これより,受診病院名,職業,性別,住所,運転の有無,年齢は受診病院の満足度を,年齢は期待度を規定する要因であると考えられた.

    また,住民に近いところにあるA病院の主な受診者は高齢で運転できない女性であり,若い会社員で運転できる者は市外の病院に受診する傾向がみられた.これらの住民の背景条件は受診病院を決定する要因であるといえる.

  • 小長谷 百絵
    原稿種別: 原著
    2001 年5 巻1 号 p. 34-41
    発行日: 2001年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    在宅ALS患者を介護する家族の介護負担感への関連因子を検討するために,主たる介護者を対象に自記式の郵送調査を行い,328名の分析を行った.その結果,ALS患者を介護する家族の多くは女性(74.1%)で,平均年齢は56.7±10.9歳と若く,続柄1は配偶者が83.2%であった.家族の介護負担感は高く,因子分析結果より「精神的疲弊」「予期的な不安」「前向きな介護姿勢」の3つの特徴が示された,介護負担感得点は「介護者が高齢群」「介護者が男性」「介護代替者がいる群」「1日の世話時間が長い群」「経済的余裕感がない群」「介護者が無職群」が有意に高かった(p<0.05).介護負担感得点を従属変数とする数量化Ⅰ類による分析の結果,最も強く影響を及ぼしていたものは「介護者の年齢」,次いで「介護代替者の有無」「1日の世話時間」「経済的余裕感」の順で,介護者の年齢が高いこと,介護代替者が存在してもなお1日の世話時間が長いこと,経済的余裕感がないことが,介護負担感を高める方向に作用していた.

    以上の結果から介護者が高齢で経済的困窮感を持ち,介護のために1日のほとんどを患者のそばで過ごす場合,特に介護負担感が強いと判断し,看護職者は介護者に危機の予測と回避に向けて予防的なケアを行う必要があることが示された.

研究
  • 丹羽 さよ子, 松元 イソ子
    原稿種別: 原著
    2001 年5 巻1 号 p. 42-52
    発行日: 2001年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    高齢者ケアにおける看護職と介護職との協働的あり方を検討するために,クライエント情報の認識の仕方を分析した.看護職109名と介護職77名を対象に,クライエントの身体的・心理的・社会的側面および生活環境に関する47項目について情報としての重視度を調査し,看護職と介護職それぞれのデータをクラスター分析した.その結果,看護職も介護職も,病気に関連したクライエントの問題を把握するためのフレームと,対人認知のためのフレームの,2つに分けてクライエント情報を認識していることがわかった.さらに詳しくみると,クライエントの問題では看護職は健康問題に焦点を当てながら,介護職は生活面に焦点を当てながら把握しようとしていた.また,対人認知の仕方にも違いがあった.

    以上の結果から,看護職と介護職ではクライエント情報を認識する際の視点が異なるので,その情報を共有することは高齢者のニーズの把握やその高齢者の理解につながると考えられる.

  • 北川 かほる, 岡崎 美智子, 宍戸 幽香里, 古賀 美紀, 土作 幸恵
    原稿種別: 研究
    2001 年5 巻1 号 p. 53-58
    発行日: 2001年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,重度心身障害児(者)の緊張緩和に繋がる音楽刺激の選曲と時間設定に関する基礎的研究を行うことである.方法は,健康な女子看護学生30名(平均年齢19.77歳)を対象に,重度心身障害児(者)の心身にやすらぎを与える目的で選曲と時間設定をした音楽刺激を行った.実験中の生体反応は,皮膚温2点(右手背部と右項部)・脈拍数・呼吸数を連続的に測定した.また,感情面については半構成的聞き取り調査を行った.音楽聴取時の音楽期と無聴取時の無音期の生体反応,および感情面の比較分析を行った.その結果,平均右手背部皮膚温は音楽期に低下し,音楽期と無音期間に有意差(p<0.001)が認められた.また,脈拍数は無音期に有意に高い値(p<0.001)を示した.感情面は,音楽期は安定した情緒反応を示し,無音期は不安定な情緒反応を示した.この結果から,音楽刺激の選曲と時間設定は,重度心身障害児(者)の緊張緩和に繋がることが示唆された.

  • 山崎 京子, 内田 陽子
    原稿種別: 研究
    2001 年5 巻1 号 p. 59-66
    発行日: 2001年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅でリハビリテーションを必要とする利用者に対して,訪問看護職の立場からリハビリサービスの質保証をするための動作別機能訓練の標準化プログラムを開発することである.方法は1999年9月から2000年12月まで訪問看護職の機能訓練に対する問題点を検討し,動作レベル別に機能訓練の内容を動作テストから評価まで一連の過程を標準化するプログラムを開発した.開発の前後に利用者全体のアウトカム評価,および2000年12月から3月まで23人の利用者に対して標準化プログラムを実施,評価した.

    その結果,以下の知見が得られた.

    1.開発した標準化プログラムは,利用者に対して,精神面や嚥下障害,痴呆も考慮した多岐にわたるニーズにも対応する.

    2.標準化プログラムを23人に実施した結果,ほぼすべての機能訓練が実施されており,利用者の機能面や表情,活気面で若干の改善傾向がみられた.このことより,標準化として利用可能で,効果が期待できる.

    3.標準化の各項目にはコード番号を記入し,将来,コンピュータ上でアセスメント,ケアプランのプログラムに組み入れることにより効率化できる.

  • 植田 恵子, 岡本 玲子, 中山 貴美子
    原稿種別: 研究
    2001 年5 巻1 号 p. 67-75
    発行日: 2001年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,女性が仕事を続けながら介護を継続することにどのような要因が影響すると考えられるのかを探ることである.調査1では,就労している女性介護者5名への面接調査より女性介護者の就労継続に影響すると考えられる項目収集を行った.調査2では,40歳以上の在宅ケア関連職者146名への質問紙調査を行い,度数分布と平均値をもとに,先の項目を精選した.調査1の結果,120項目が収集され,それらは被介護者・主介護者・介護・家族・サービス・就労に関連する内容に分類された.調査2の結果,女性介護者の就労継続に強く影響すると考えられる要因は,先のどの分類からも抽出され,46項目が精選された.これらは,在宅ケア関連職者が女性介護者の就労継続を支援する際にアセスメントの手がかりになる項目であると考える.

資料
  • 小島 みさお, 鉄谷 考史, 若佐 柳子
    原稿種別: 資料
    2001 年5 巻1 号 p. 76-82
    発行日: 2001年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅要介護者の轡部の皮膚トラブルと排便時のケア方法の実態を明らかにし,予防的ケアのあり方を検討するための基礎資料を得ることである.在宅要介護者の介護者110名に対して郵送調査を行い,以下の知見を得た.

    1)要介護者の腎部の皮膚トラブルは,かさつき,発赤,湿疹,褥瘡いずれも3~4割強の経験がみられ,皮膚トラブル症状は相互に関連があった.

    2)長期にわたり排泄介護を要する対象者や,便の性状が水様便・軟便が多い場合は,皮膚トラブル経験と相関がみられた.

    3)排便時のケア方法は,洗浄,おしりふきによる清拭,スキンケア(皮膚保護行為)に分類された.それらの方法を複数組み合わせている者が3割強いた.湿疹や褥瘡の皮膚トラブル経験者に,洗浄やスキンケアの実施者が多かった.

    以上より,要排泄介護になった対象者には,予防的観点に立ったケアを行うことが重要であるといえる.

feedback
Top