本研究は,H県下4市町に在住する在宅療養者51名を対象に,睡眠の状況と長時間就床の要因を把握するとともに,その要因による療養生活への影響を明らかにすることを目的に行った.その結果,以下の結論を得た.
1)在宅療養者の睡眠は,健康な高齢者に比べて就寝時刻が早く起床時刻が遅く,総就床時間は長くなっていた.平均総就床時間が9時間を越える療養者は21名おり,最も長い者は13時間30分であった.
2)長時間就床の要因として,生活自立度が低いことと,夫婦世帯であることが考えられた.
3)自立度の低い療養者は,夜間,トイレよりも寝室で排泄する者が多く,入浴は自宅浴室よりもデイサービスを利用する者が多くなっていた.
4)自立度が低いことによって排泄や清潔などの日常生活行動の場が変化しており,そのことが居住環境に対する満足感の低さにつながっていると推察された.
これらの結果を踏まえ,療養者が長時間就床に至らないよう,早朝に訪問して起床を促し,睡眠状況を把握して適切に指導すること,居住環境を改善したり,日中の活動量を増やすために住居内外の行動範囲を広げ外出の機会を増やすことを,療養の早い段階から提言していく必要がある.
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