日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
研究
介護保険による電動ベッド貸与と在宅要介護者の身体能力に関する研究
大倉 美鶴村田 伸村木 里志是松 きくゑ大山 美智江
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2005 年 9 巻 1 号 p. 87-93

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抄録

本研究は,在宅での電動ベッド貸与状況と要介護度や基本動作等との関連について検討した.対象は,福岡県内のA事業所で在宅サービスを利用している要介護者81人(男性48人,女性33人,平均年齢74.9歳)である.対象者のうち48人(59.3%)が電動ベッドを貸与していたが,貸与していない33人(40.7%)の年齢,男女の割合,痴呆(認知症)の有無,要介護度,基本動作能力を比較すると年齢,男女の割合,痴呆の有無の割合には有意差が認められず,要介護度および基本動作能力において有意差が認められた(p<0.01).電動ベッドあり群はなし群より要介護度が高く,寝返り動作から歩行までの基本動作の自立度がすべてにおいて低いことが明らかになった.また,電動ベッド貸与の有無を目的変数としたロジスティック回帰分析においても基本動作得点のオッズ比(1.95,95%CI:1.32-2.88)が有意であったことから,電動ベッド貸与基準に基本動作の可否が最も関係していることが示唆された.

また,電動ベッド貸与開始の判断は「寝返り,起き上がり,立ち上がり」の動作能力低下が基準とされている.しかし,本調査による各基本動作の自立度と電動ベッド貸与率状況から,「立位保持,移乗,歩行」の自立の可否にかかわらず電動ベッドが貸与されている実態が示唆された.

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© 2005 一般社団法人日本在宅ケア学会
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