2020 年 15 巻 1 号 p. 52-57
「恋人とは一心同体であり、恋人は自分のものだから自分の好きなように支配しても良いし、束縛は愛の証である」と感じるような依存的恋愛観は、現代の若者に多く見られ、デートDVの要因とされている。また自分らしくあるという感覚である「本来感」や「仲間集団への依存傾向」は依存的恋愛観の心理的要因であると考えれる。そこで、依存的恋愛観と暴力観の関連、および、本来感と仲間集団への依存傾向と依存的恋愛観の関連を検討することが本研究の目的である。高校生839名を対象に質問紙調査を実施した結果、男女ともに、依存的恋愛観が強まると、恋人への暴力行為を「暴力」と認知しない傾向が示された。また女性の場合、低い本来感が仲間集団への依存に影響を与え、それが恋人への依存性にも関連している傾向が示された。一方、男性の場合は、本来感と依存的恋愛観に関連は見られず、仲間集団への依存のみが恋人への依存性に関連していた。
ジェンダー差については、依存的恋愛観は男性が有意に高く、仲間集団への依存は女性が有意に高かった。また暴力観では男性が女性よりも「暴力にあたる」と回答する傾向が強かった。
本研究では相手に依存しすぎない健全な恋愛観がデートDVの予防に関連することが示唆されたので、今回の結果をもとに、予防教育プログラムを開発することが今後の課題である。