日本健康相談活動学会誌
Online ISSN : 2436-1038
Print ISSN : 1882-3807
論文
中学生の自己決定・判断能力、自己表現能力、対人関係能力を育成するための養護教諭の対応
―インタビュー調査による対応のバリエーション拡大の試み―
齊藤 理砂子岡田 加奈子
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2013 年 8 巻 1 号 p. 56-68

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抄録

 養護教諭は、保健室において児童生徒が自分自身の健康を管理する能力、いわゆる健康管理能力を育成するために、児童生徒一人ひとりに必要な能力を見極めながら日々、様々な対応をしている。しかし、保健室に来室した児童生徒に対して、養護教諭はどのような能力に着目して健康管理能力を育成しようとしているかを体系的に概念化したものは見当たらなかった。そこで、先行研究1)では、養護教諭が行う中学生一人ひとりを対象とした健康管理能力を育成するための対応とその視点について明確化することを試みた。その結果、養護教諭はけがや疾病の自己管理能力だけではなく、「自己表現能力」「対人関係能力」「自己決定・判断能力」等の17の視点に目を向けて、日々対応していることが明らかになった。この結果は、同様な背景をもつ生徒が現れた時に、意図的に対応できるという意味で意義がある研究だったと考える。

 しかし、先行研究1)の結果では、養護教諭が中学生に育てたいと考えている視点は17の能力として明確化されたが、各々の対応については、2~7つしか明確化されていない。そのため、実際に実践につなげていくためには、まだ不十分な面が多い。よって本研究では、さらに面接調査を行うことにより、それらの育成のために行っている養護教諭の対応のバリエーションを拡大することを試みた。

 今回の研究においては、先行研究1)で明らかになっている17の能力のうち、明確化された対応の数が比較的多く、生涯を通して主体的に健康を保持増進していく上で、現代の子どもたちに必要と思われる2)-4)自己決定・判断能力、自己表現能力、対人関係能力の3つに着目した。

 本研究の結果、次のような対応が新たに追加された。自己決定・判断能力を育成するための対応では「子どもの判断を尊重する」等、5つのカテゴリが追加された。自己表現能力を育成するための対応では「伝えたいことを整理することを促す」等、6つのカテゴリが追加された。対人関係能力を育成するための対応では「コミュニケーションの機会をつくる」等、6つのカテゴリが追加された。

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