日本健康相談活動学会誌
Online ISSN : 2436-1038
Print ISSN : 1882-3807
論文
広汎性発達障害を持つ子どもの心身の健康問題への対処方法についての検討
―本人及びその保護者からのインタビュー調査より―
鎌塚 優子古川 恵美
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2013 年 8 巻 1 号 p. 86-101

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抄録

 本研究では、広汎性発達障害を持つ子どもの心身の健康問題への対処方法を検討するために、青年期の当事者とその保護者12名を対象とし、グループ・インタビュー及び個人インタビューを実施し、本人及び保護者が経験した問題点を明らかにした。さらにその結果を踏まえて、対処方法について検討することを目的とした。

 その結果、当事者からは、[原因不明への不安][頻繁な同症状への疑問][症状が進行していく段階的な知覚困難][状態説明の技術不足][同症状に疾病のバリエーションがある事の認識不足][疼痛鈍麻][検査方法の理解困難][支援してもらえない無力感]、保護者からは、「身体感覚の鈍麻による症状・状態の認識困難に対する困惑」「身体感覚の過敏性による過剰反応に対する困惑」「食に関する調整・特異な習慣・工夫・嗜好性への困惑」「睡眠に関する調整困難」「身体バランス・動作のぎこちなさ・不可解な動きへの困惑」「成長・発達の遅れへの不安」「検査・病院受診時の対応困難」「精神症状への対応不安」「適切な対人関係を構築できない不安」の問題点が抽出された。

 これらの結果から、広汎性発達障害を持つ子どもたちには、健康問題に対する気づきを促す事が重要であり、事前に病気やけがについての知識を学習しておくことや客観的に身体の状態を知るための機器などによる測定方法の習得が必要であること、健康問題が起きたときの対処方法を獲得するために表現技術を習得することが大切であることが示された。さらに健康問題が起きた時に本人が知覚しにくい特性を持つため周囲が理解すべき支援の方向性として、教職員が障害特性を理解し日常の観察力を磨くこと、校内の物理的な環境調整、食に関する指導への配慮、検査方法等の工夫、早期の体系的な保健教育のプログラムを開発、保護者に対する理解の重要性が示唆された。

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© 2013 日本健康相談活動学会
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