日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
研究報告
首都圏在住の重症心身障害児者の東日本大震災での経験
-脆弱性から考える今後の課題-
山本 美智代中川 薫米山 明
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2016 年 9 巻 1 号 p. 17-32

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抄録

東日本大震災発生当時の首都圏在住の重症心児障碍児者(以下、重症児者)の経験とその割合を明らかにするために、都内医療機関に通院する重症児者の家族を対象に、無記名自記式の配票調査を行い、郵送法にて回収し、116人の分析対象者を得た。分析の結果、大地震発生直後の経験では「停電により、住宅用エレベーターが使えないことで閉じ込められた(15 .4%)」、「公共機関が止まり、ガソリンが不足したため学校や施設に行けなくなった(15.4%)」が最も多かった。発生から1か月~半年の間では、「計画停電の有無がはっきりせずに、生活のスケジュールが立たなくなった(22.4%)」が最も多く、次いで「子どもの食糧や栄養剤が足りなくなった(17.8%)」経験であった。 本研究結果から、災害によって一般の人よりも重症児者が影響を受けやすい理由が社会にあると考えられたことが4つあった。1つ目は日常の社会との関係性が希薄であること、2つ目は生命維持に必要な物資を他者に依存しなければ調達できないこと、3つ目は学校やケア機関が身近なコミュニティーの中にないこと、4つ目は重症児者が重層的なケアを必要とするため、ケア機関が復帰するまでに時間がかかることである。

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© 2016 日本ヒューマンケア科学学会
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