日本助産学会誌
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原著
不妊女性が体外受精―胚移植を繰り返すことの意味
加藤 啓子横尾 京子中込 さと子
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2005 年 19 巻 1 号 p. 1_19-1_29

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抄録
目的
不妊女性にとっての体外受精―胚移植を繰り返すことの意味を明らかにする。
対象と方法
本研究デザインは, 帰納的記述的研究であり, 対象は, 体外受精―胚移植を3回目以上受けようとする, 今まで生児を得たことのない5名の女性であった。データ収集及び分析は, 不妊治療開始から現在までの思いなど, 半構成型面接を実施し, 構造化内容分析法を用い分析し, 体外受精―胚移植を繰り返すことの意味を抽出した。
結果
不妊女性にとってIVF-ETを繰り返す体験は, 「悩みながらIVF-ETを繰り返す体験」と「信念を持ってIVF-ETを繰り返す体験」の2つのパターンに分類できた。前者はIVF-ETを続けさせようとするものと, 思いとどまらせようとするものとの葛藤を体験しており, 後者はIVF-ETを思いとどまらせるものはなかった。
「悩みながらIVF-ETを繰り返す体験」の3事例に内包された意味は「価値の変容化」であり, 「信念を持ってIVF-ETを繰り返す体験」の2事例に内包された意味は「治療目的の二次化」であった。
結論
「価値の変容化」とは, IVF-ETを繰り返しながら, 不妊である自分に対して医療化的視点でなく, 日常的視点から自発的に固有の価値を付与することである。「治療目的の二次化」とは, 本来, 合目的的で斉一な先端医療を, 女性自身が日常的視点から自己の人生に引き付けて固有の意味を付与したうえで, 治療を受けることと考えられた。
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© 2005 日本助産学会
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