日本助産学会誌
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原著
緊急帝王切開を体験した女性の出産後約1年半までの出産に関する気持ち
今崎 裕子
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2006 年 20 巻 1 号 p. 1_79-1_88

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抄録

目 的
本研究の目的は,緊急帝王切開を体験した女性の出産後約1年半までの出産に関する気持ちを構成する因子を抽出し,その変化の過程を明らかにすることである。
対象と方法
対象者は緊急帝王切開後1年1ヶ月~1年7ヶ月の初産婦5名である。データは,「緊急帝王切開を知らされた時から今までの気持ち」について半構成的インタビューにて収集し,逐語録にした。分析は質的帰納的方法により行った。
結 果
緊急帝王切開を体験した女性の出産後約1年半までの出産に関する気持ちを構成する因子として,1. 緊急事態に伴うパニック状態,2. 出産時と出産後の医療者に対する不満と信頼,3. 緊急帝王切開分娩になった自責の念,4. 母親としての不全感,5. 緊急帝王切開分娩への感情の変化,6. 夫と周囲の人から受けるサポートのやすらぎと期待,7. 生活のゆとりによる子育てのつらさから喜びへの変化,以上7カテゴリーを抽出した。
緊急帝王切開後約1年半までの出産に関する気持ちは,緊急帝王切開時のパニック状態から医療者に対する不満や信頼として表れ,産後1~2ヶ月間の母親としての不全感,自責の念となり,産後3ヶ月頃より徐々に子育て生活に慣れることで,子どもへの愛着が増し,さらに約1年半後には子育ての楽しさへと変化していた。
結 論
「経膣分娩は自然の摂理」「痛みを伴なった出産をすることがお母さん」といった女性の出産観が,緊急帝王切開を体験した女性の出産に関する気持ちに影響することが示唆された。また,女性が安心し,納得できるような繰り返しの説明,さらに女性の出産に対する考えを知った上での想起と傾聴による心理的サポートの必要性,夫の緊急帝切決定時でのショックや反応が,女性の気持ちに影響を与えることを考慮する必要性が示唆された。

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© 2006 日本助産学会
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