抄録
目 的
子育て期をより幸福に過ごすための母親自身の工夫とその効果,さらに子育て期をより幸福に過ごすことへの困難について明らかにすることである。
対象と方法
A市内在住の乳幼児期の育児をしている母親23人を対象とし,半構成的面接内容に基づいて面接を行ない,データを収集した。分析は面接の内容を逐語録に起こし,質的記述的研究方法により分析を行った。
結 果
子育て期をより幸福に過ごすことへの母親の工夫では,“無理をしない範囲での生活の工夫”,“他者からの育児体験のレスポンスと安心”,“時間のコントロールから得る心のゆとり”,“大変なことを乗り越えた自己評価”,“ストレスが報われる実感”,“同居者への依存と感謝”,“子どもとの時間,空間,気持ちの一体感”があった。子育て期をより幸福に過ごすことへの困難では“複合化したストレスからくる疲れとイライラ(ストレス)”,“あれもこれもと思う自分の性分”,“人に任せられない自分がやるという気負い”があった。育児幸福感の母親自身や育児への効果では“癒される”,“思いやりの心”,“育児の原動力”がもたらされていた。
結 論
無理をしない範囲での生活の工夫,ポジィティブ思考,他者との交流とくに人の話を聞く,子どもとの時間,空間,気持ちの一体感をもつことなどが子育て期をより幸福に過ごすためにより効果的と考えられる。育児幸福感の頻度を増すことは育児幸福感をより感じることに通じ,さらに家族や子どもを大切にすることに通じていた。また,同居者への依存と感謝やストレスが報われる実感,大変なことを乗り越えた,時間のコントロールから得る心のゆとりなどは母親自身の気の持ち方で母親に変化をもたらし,子育て期をより幸福に過ごすことができると考えられた。