日本助産学会誌
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総説
意思決定プロセスの共有─概念分析
辻 恵子
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2007 年 21 巻 2 号 p. 2_12-2_22

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抄録

目 的

 本研究の目的は,主として欧米で使用されている「shared decision making」の概念を分析し,女性のリプロダクティブ・ヘルスを対象とする助産実践においてこの概念を適用することの可能性を検討することである。
方 法
 看護学,心理社会学分野の論文を中心に検索し,Rodgers(2000)の概念分析アプローチを参考とし,属性,先行要件,帰結に関する記述の内容を質的に分析した。
結 果
 shared decision makingの属性は,1)当事者を巻き込むこと,2)相互に影響しあう動的な決定のプロセス,であった。このプロセスでは,コミュニケーション・対話を媒介として双方向の交流を重ね,関係者は選択肢に関する構造化された情報とともに,識別された現状認識や見込み・目標・価値観・嗜好・アイデアを分かち合い,望ましい決定に向け相互に行動し,合意に至る。先行要件は,1)健康の概念の転換疾病構造の変化と対応システムの特性,2)科学技術の進歩と医療の本質的な不確実性,3)医療モデルのパラダイムシフトの必然性,4)当事者を含む関係者の特性と権限の認識,であった。帰結として,1)人々の健康とQOLを最大にすること,2)当事者の内的な変化と成長,3)決定に関する当事者の満足,4)適正な科学技術の使用を含む倫理的な臨床ケア実践,が導かれた。
結 論
 shared decision makingの概念はケアの方法論として現場で広く導入され,それらの経験的な記述が積み重ねられることにより,さらなる発展の可能性が期待できる。またこの概念は,女性を中心にしたケア(women-centered care)の実践および研究を具体的に支える要素であり,女性を決定の中心に巻き込み,決定プロセスを共有しながら継続的に支援していく際に適用できるものと考える。

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© 2007 日本助産学会
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