抄録
目 的
産婦ケアにおいて助産師が着目している情報を明らかにし,その情報と助産師経験年数および分娩介助件数の関連について分析すること。
対象と方法
対象は助産師768名(病院・診療所553名,助産院215名)で,データは自記式質問紙を用いて収集した。質問紙の内容は正常分娩のケアに関する情報177項目で,情報への着目度について5件法で回答をもとめた。分析はSPSS15.0を用いて因子分析を行い,助産師経験年数と分娩介助件数の2要因で分散分析を行った(P<0.05)。経験年数は熟達の10年ルールに基づき10年未満とそれ以上で分類し,分娩件数は10年未満の助産師の中央値を基に300件未満とそれ以上に分類した。
結 果
質問紙は437名から回収され(回収率56.9%),有効回答数は433名(有効回答率56.4%)であった。177項目の因子分析の結果,助産師の着目情報は17因子(82項目)に分類された(累積寄与率67.9%)。17因子には,産婦の身体面や心理面,ケアの希望,家族や出産環境の情報が含まれていた。17因子について助産師経験年数10年以上と10年未満で比較した結果,10年以上の助産師は9因子の着目度が有意に高かった(P<0.01)。その内容は,産婦の心理面や家族,臍帯切断の時期や会陰保護などケアの希望,月と潮の動きに関する情報であった。経験年数で有意差のなかった8因子は,産婦の身体的変化や医療機器のデータ,室内の環境などの情報であった。17因子と分娩介助件数300件未満と300件以上では,有意差はなかった。
結 論
17因子は,助産師が産婦ケアを行う上で大切にしている具体的な情報の全体像を示している。経験年数で差のなかった8因子は視覚的・客観的な情報であり,9因子は洞察力やコミュニケーション能力,多様なニーズの対処能力が関連する情報である。この9因子は,10年以上の経験の中で獲得した助産師の能力を反映していると考える。