日本助産学会誌
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原著
ハイリスク児の母親とかかわる助産師の体験
木村 晶子
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2009 年 23 巻 1 号 p. 72-82

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抄録
目 的
 本研究は,産科病棟でハイリスク児の母親のケアを行っている助産師がどのような体験をしているかを明らかにすることを目的とした。
研究協力者と方法
 本研究の研究協力者は,NICUを標榜する病院の産婦人科病棟に勤務し,過去3年以内にハイリスク児の母親とかかわった経験のある助産師10名である。
 本研究は現象学的アプローチによる質的研究デザインを用い,データ収集は非構成的面接法により行った。データの分析は1)インタビュー内容を逐語録化,2)データを繰り返し読み語られた世界をイメージする,3)研究協力者ごとの「助産師の体験」を「仮テーマ」として表現する,4)仮テーマを他の研究協力者のデータからも解釈する,5)10名の研究協力者全体における「助産師の体験」を示すテーマへと統合し,テーマを裏付けるデータと解釈を記述,6)「助産師の体験」の根底にある本質の探究を通して助産師の体験を統合化する,の6つの手順で行った。また,研究者自身の臨床体験について内省し,研究協力者の体験に近づくことに役立てた。
結 果
 ハイリスク児の母親とかかわる産科病棟の助産師の体験の本質には,ハイリスク児の母親は悲嘆から受容への心理過程をたどるというイメージ,「児を受けいれてほしい」という願い,母親の思いを聴かなければならないという使命感・役割意識があった。このような本質に支えられた助産師の体験の特質をあらわすテーマとして次の5つがあった。テーマ1:児を受け入れてほしい,テーマ2:母親の気持ちにあわせたケアをしたい,テーマ3:母親にはこれ以上のストレスをためてほしくない,テーマ4:思いを聴くことの難しさ,テーマ5:もっとゆっくりかかわりたい。
結 論
 今回,産科病棟でハイリスク児の母親とかかわる助産師の体験が明らかになった。このような体験を理解するとともに,今後は,助産師が自信をもってケアにあたれるように傾聴の技術を含めたトレーニングが必要である。
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© 2009 日本助産学会
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