日本助産学会誌
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原著
助産師による退院後の母乳育児ケアにおける観察視点
長田 知恵子
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2009 年 23 巻 2 号 p. 182-195

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抄録
目 的
 地域において,授乳期の母乳育児ケアに精通している助産師による観察視点の構成因子を抽出し,その特徴を明らかにすることである。
対象と方法
 対象者は,病院や地域で母乳育児支援をしている助産師6名で,研究協力者である母子は,対象助産師に初めてケアを受ける25ケースであった。
 対象者が研究協力者に母乳育児ケアを行う場面を参加観察した後に半構成的インタビューを行い,得たデータから,“助産師による観察”と思われることを意味内容に沿って抽出し,カテゴリー化したデータを既存文献と比較検討した。
結 果
 母乳育児ケアにおいて助産師が対象の母子を捉え,アセスメントする際の観察項目や因子は,【母親】【子ども】【母子】の3コアカテゴリーから構成されていた。また先行研究と比較すると,【母親】の心理的状態として〈行動特性〉や〈内省〉〈イメージ〉が,社会的状態としては〈衣服〉や〈生活〉〈医療者〉が新たな因子として見出された。また【子ども】の「パワー」と「フォローアップ」,【母子】の「イベント」も本研究で新たに見出された。そして助産師が行っている観察の特徴として,母子を取り巻く環境や,より暮らしに密接した具体的で個別性を重視した観察因子が抽出され,中でも特に乳房の状態は助産師自身の手によって感じ分けているという観察因子が抽出された。さらに助産師の観察視点の特徴としては,【母親】と【子ども】の各々を観るだけでなく,【母子】という母親と子どもの双方の観察を併せ持つ視点から構成されていた。
結 論
 母乳育児ケアにおいて助産師は,授乳期の母子の生活に密着した詳細な情報を多面的に観察するとともに,助産師自身の手で感じ分けていた。また【母親】と【子ども】の各々の視点からだけでなく,母親と子どもの双方の観察を併せ持つ【母子】という3視点から構成されているという特徴があった。
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© 2009 日本助産学会
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