抄録
目 的
出産後3か月までの双子の母親が授乳方法を形成するプロセスを明らかにすることを目的とした。
対象と方法
理論的基盤としてBlumerのシンボリック相互作用論をおき,Grounded Theory Approachに基づいて研究を行った。双子の出生時に先天性奇形や疾患を有さず,すぐに経口授乳が開始された双子の母親5名を対象に参加観察と半構成的面接法によりデータを収集した。面接は,産褥入院中,子どもの1か月健診時頃,3か月健診時頃の3時点で実施し,Strauss & Corbin(1990/1999)及び才木(2005)の手法を用いて分析を行った。
結 果
出産後3か月までの双子の母親の授乳方法を形成するプロセスは[比例授乳の獲得]であった。【比例授乳】とは,ジャン・サーモン・ピクテ(井上,1975)が明文化した「比例」の概念を応用し,本研究で見出した授乳態度であり,《個性を尊重》《平等を尊重》するために《2児の比較》を行っていることに対して《矛盾した思い》を抱きながら,《優先度を考慮》して双子の母親が判断して作り上げる双子特有の授乳態度である。入院中の母親は,助産師に伴走されるような形で授乳を進める【伴走型授乳】を行っていた。退院後は【泣きのプレッシャー】が高まり,さらに【一時的な出来事】に遭遇しながらも【迷いながらの人工乳の補充】や【頻回授乳への対応戦略】によって2児の泣きと戦っていた。母親は,出産後約1か月までは主に体重差を気づかい授乳方法を選択していた。その後,【児の成長】により,体重差への気づかいは減少し,2児を比較して個々の特徴を見ながら児の優先度に応じた授乳を行うようになっていた。そして,【泣きのプレッシャー】は低下し,2児の欲求に応じて主体的に授乳する【主体型授乳】へ変化し,【母乳育児の継続】を行っていた。
結 論
出産後3か月までの双子の母親が自分なりの授乳方法を形成するプロセスは,[比例授乳の獲得]であった。保健医療従事者は,このプロセスを理解した上で,双子の母親が,個々の児の特徴がわかるような支援が必要であることが示唆された。