抄録
目 的
乳幼児をもつ母親の健康生活習慣の実践状況と,精神的健康および育児負担感の予測因子である育児に対する自己効力感の関連性を分析することを目的とする。
対象と方法
対象は関西圏都市部に在住の乳幼児をもつ母親で,倫理的配慮のうえ,個人的背景因子,健康生活実践状況,GHQ-12,育児に対する自己効力感尺度の各項目を調査した。乳幼児健康診査対象児の保護者宛てに質問紙を事前郵送にて配布し,健康診査時に648名より調査票を回収した。有効回答579名(有効回答率67.6%)について分析した。
結 果
1 .健康生活習慣実践状況は,7つの健康生活習慣のうち,平均4項目が実践されており,育児数や子どもの年齢による影響は認められなかった。
2 .禁煙・非喫煙習慣が90.0%と最も高く,次いで適正飲酒(84.5%),朝食摂取習慣(81.2%),6~8時間の睡眠(80.8%)の3項目が高い割合で実践されていた。一方で,運動習慣(6.0%)と間食しない習慣(7.4%)では,実践が困難であった。
3 .睡眠習慣が形成されていない母親は精神的健康が有意に低かった。特に,平均睡眠時間「6時間未満」の群は,「6~9時間未満」の群に比べて,オッズ比は2.75倍と精神的健康が低い者が多かった。
4 .運動習慣実践群では非実践群に比べてオッズ比は2.96倍と,育児に対する自己効力感が高かった。
結 論
乳幼児をもつ母親で睡眠時間が確保できない状況下では,精神的健康が不良であることが示された。また,育児に伴なうストレス反応の予測因子として働く育児に対する自己効力感については,運動習慣の確立と密接に関連していることが理解された。したがって、母親のメンタルヘルス対策をベースとした,健康生活習慣改善のための育児支援が重要であることが示唆された。