日本助産学会誌
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原著
助産師の職業的アイデンティティに関連する要因
佐藤 美春菱谷 純子
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2011 年 25 巻 2 号 p. 171-180

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抄録

目 的
 本研究の目的は,助産師の職業的アイデンティティを測定する尺度を作成し,関連要因を検討することである。更に,助産師の職業的アイデンティティの職業継続意志への関連についても検討し,助産師教育における職業的アイデンティティを育てる方策の示唆を得る。
対象と方法
 全国の病院87施設に勤務する就業2年未満の助産師414人を対象とし,郵送法による自記式質問紙調査を実施した。作成した助産師の職業的アイデンティティ項目の因子分析,ステップワイズ法による要因との重回帰分析,t検定を行った。
結 果
 有効回答は204人(有効回答率49.3%)であり,平均年齢は25.5±3.9歳であった。助産師の職業的アイデンティティ尺度5因子26項目を作成した。その下位5因子にはそれぞれ,F1「助産師として必要とされることへの自負」,F2「自己の助産師観の確立」,F3「助産師選択への自信」,F4「助産師の専門性への自負」,F5「助産師としての社会貢献への志向」と命名した。助産師の職業的アイデンティティ下位尺度への関連要因は,助産師学生時代の肯定的感情を伴う体験,教師からの精神的支援,就職後の肯定的・否定的感情を伴う体験,学生時代と就職後の仕事認識のギャップ,将来展望,分娩介助件数,先輩助産師からの精神的支援,性役割態度,役割モデルの有無であった。職業継続意志への関連要因は,F3「助産師選択への自信」,就職後の否定的感情を伴う体験,将来展望,性役割態度であった。
結 論
 本研究では,助産師の職業的アイデンティティ尺度の信頼性と構成概念妥当性が確認できた。助産師の職業的アイデンティティは,助産師学生時代と就業後の意識や体験要因,精神的支援,平等志向的な態度によって高められることが示唆された。また,職業的アイデンティティと職業継続意志との関連も示された。

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© 2011 日本助産学会
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