抄録
目 的
本研究の目的は,授乳期の母親を対象とする乳房の状態や乳汁の分泌状態を観るアセスメントツールを開発するにあたり,より臨床での有用性を高めるため,作成したツールの項目を精選することである。
方 法
既存研究(長田,2007)ならびに文献検討に基づき,本研究のアセスメントツールの原案を作成した。さらに母性・助産学領域の研究者および臨床で母乳育児支援に携わっている助産師らが内容妥当性および表面妥当性の検討を行い,追加修正した。母乳育児支援の経験年数が異なる助産師5名と乳房疾患の既往がない授乳期の母子45組,計90乳房を対象として調査した。
結 果
妥当性の検討として,構成概念妥当性は,主因子法・プロマックス回転による探索的因子分析を行い,3因子16項目が抽出された。第1因子からそれぞれ【乳汁の産生を観察する視点】【乳汁のうっ滞を観察する視点】【子どもの母乳の飲み方を観察する視点】と命名した。このうち,第2因子は,既存のアセスメントツールとの相関において,より強い相関が得られた。また,超音波検査法を用いた診断でも同様の結果が得られたことから,基準関連妥当性の確認ができた。
信頼性の検討は,Cronbach's α係数0.844(下位概念:0.872,0.786,0.852)であることから同質性の高さを確認した。同等性は,級内相関とκ係数から検討したところ,母乳育児支援歴6年以下の助産師とでは一部の項目で0.4を下回るものの,母乳育児支援歴8年以上の助産師間では“ほぼ一致”していた。
結 論
本研究のアセスメントツールは,授乳期の乳房状態を観察するツールとして,3因子16項目から構成される。本研究において,信頼性や妥当性の確認および項目間の偏りや使用者への負担が少ない項目を見極めたことにより,臨床での有用性が期待できると考える。