本稿では,ゲーム理論を応用し,実務の説明理論構築を志向した分析的研究について,その意図と,それが管理会計の領域にもたらす貢献を明らかにする.伝統的に,このような分析的研究としてはエージェンシー理論を応用した研究が想定され,特に業績管理会計に関連するテーマを分析してきた.しかし,近年,戦略管理会計,特にポジショニング・アプローチのように市場における企業間の関係を対象とするテーマが増えてきたが,このようなテーマの分析には産業組織論の応用が有用である.そして,いずれにせよ,分析的研究は,伝統的知見の拡充を意図しており,管理会計教育への貢献を第一に考えていると言える.また,革新的な技法を提供することや,業績を改善するための方策を示すことはないが,分析的研究は教育を通した実務へ貢献も重視している.さらに,分析的研究が実務との関連を強めるために,それ以外の研究方法との連携を重視しなければならず,その点にも言及する.