日本助産学会誌
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26 巻, 2 号
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原著
  • —因子的妥当性による質問項目の選定—
    中島 久美子, 常盤 洋子
    2012 年 26 巻 2 号 p. 166-178
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は,妊娠期の妻への夫の関わりに対する妻の満足感を妻と夫の認識から捉えた「妊娠期の妻への夫の関わり満足感尺度」を作成するため,尺度の因子的妥当性を検討し,尺度の質問項目を選定することである。
    対象と方法
     対象者は第1子妊娠期(初期,中期,末期)の夫婦である。夫婦760組に配布し,回答の得られた437組のうち419組を分析の対象とした。尺度の質問項目は,先行研究(中島・常盤,2011)から得られた「妊娠期の妻が満足と感じる夫の関わり」を構成する概念の3つの側面,「夫婦の親密性」「家族システム」「親になる意識」に対応させて選んだ。尺度の質問項目は,妊娠初期40項目,妊娠中期46項目,妊娠末期51項目からなり,回答は5件法であり夫の関わりに対する妻の満足の程度が測定された。
    結 果
     「妊娠期の妻への夫の関わり満足感尺度」は,「妻用の尺度」では妊娠初期14項目,妊娠中期21項目,妊娠末期24項目,「夫用の尺度」では妊娠初期17項目,妊娠中期20項目,妊娠末期17項目となった。因子分析の結果,妻と夫,各々の尺度に「妻の健康と情動への気づかい」「家事労働」「子どもが生まれることに関する夫婦のコミュニケーション」の3つが抽出された。妻と夫,各々の尺度の因子構造は,「妊娠期の妻が満足と感じる夫の関わり」を構成する概念の3側面を含んでいることから,因子的妥当性が確認された。内的整合性では,「妊娠期の妻への夫の関わり満足感尺度」の下位尺度にCronbach'sα=.78~.92の高い信頼性が確認された。
    結 論
     本研究では,妊娠期の妻への夫の関わりに対する妻の満足感を妻と夫の認識から捉えた「妊娠期の妻への夫の関わり満足感尺度」の質問項目が選定された。妊娠各期の尺度の下位尺度では,全てにおいてCronbach'sα=.78~.92の高い信頼性係数が得られたことから,妊娠各期の妻への夫の関わりに対する妻の満足感を妻と夫の認識から捉えた尺度の質問項目が選定されたといえる。また,本尺度は「妊娠期の妻が満足と感じる夫の関わり」の概念の3側面を含んでいることが確認され,因子的妥当性が支持された。
  • —信頼性と妥当性の検討—
    長田 知恵子
    2012 年 26 巻 2 号 p. 179-189
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は,「授乳期の乳腺炎診断アセスメントツール」を開発し,その信頼性と妥当性を検討することである。
    方 法
     本研究の「授乳期の乳腺炎診断アセスメントツール(ATLM)」は,既存研究(長田,2010)と文献検討を基盤とし,母乳育児支援の専門家による内容妥当性を検討した後,予備的な研究を行った。その結果を基に,本研究では検討項目を16として調査を実施した。本研究の調査対象は,乳腺炎以外の乳房疾患既往者は除外とし,乳汁生成Ⅲ期(産後9日目以降母乳育児終了まで)の母子277組,乳房数554とした。調査は,母乳育児相談室等の計4ヵ所で,2010年4月~11月に調査を行った。調査内容は,調査協力施設に来院した母子に質問紙への記載と体温測定を依頼した。担当助産師には,通常ケア後,開発中のATLMとLATCH(LATCH assessment tool)への記載を依頼した。対象の母親には,さらに,調査1週間以降に,その後の状態を問う質問紙への回答を依頼した。本研究は,大学の倫理審査で承認後に行った。
    結 果
     主因子法,プロマックス回転の結果,ツールは12項目3因子であり,各因子は【乳汁のうっ滞を観るポイント】【乳汁の産生を観るポイント】【子どもによる乳汁の排出を観るポイント】と命名した。併存妥当性としてLATCHとの相関はr=-0.525であり,医療介入についての予測的中度は96.9%であったことから基準関連妥当性が確認できた。またツール全体のα係数は0.820で(下位因子:0.859,0.803,0.818),評定者間一致は0.490~0.852で概ね確認できた。ツール合計得点における医療介入のカットオフポイントは32で,感度98.0%特異度87.5%となった。このうち,第2因子より第1因子が高値であること,第1因子の合計得点が11以上であることも必須要件とした。
    結 論
     本研究のツールは,妥当性および信頼性について確認できた。今後,臨床において,新人あるいは若手助産師の教育教材および母乳育児支援の際の判断基準の1つとしての貢献が可能である。
  • —傾向スコアによる交絡因子の調整—
    中村 幸代, 堀内 成子, 桃井 雅子
    2012 年 26 巻 2 号 p. 190-200
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     日本人女性を対象に,妊娠時に冷え症であることでの,前期破水発生率について,冷え症でない妊婦と比較分析し,冷え症が前期破水の誘因であるかについて,因果効果の推定を行うことである。
    対象と方法
     研究デザインは後向きコホート研究である。データ収集期間は,2009年10月19日から2010年10月8日までの約12カ月である。調査場所は,首都圏の産科と小児科を要する総合病院6箇所である。研究の対象は入院中の産後の女性2810名であり,質問紙調査と医療記録からの情報を抽出した。また,分析方法には,傾向スコア(propensity score)を用いて交絡因子のコントロールを行い,その影響を調整した。
    結 果
     前期破水であった662名(23.6%)のうち,冷え症がある女性の割合は348名(52.6%)であり,冷え症でない女性の割合は314名(47.4%)であった。冷え症でない妊婦に比べ,冷え症である妊婦の前期破水発生率の割合は,1.67倍(共分散分析)もしくは1.69倍(層別解析)であった(p<.001)。
    結 論
     冷え症と前期破水の間の因果効果の推定において,因果効果がある可能性が高いことが示唆された。
  • 藏本 直子, 北川 眞理子
    2012 年 26 巻 2 号 p. 201-210
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は,産褥期における母体の酸化ストレス度と抗酸化力および,母乳の総抗酸化能について基礎的データを得るとともに,母乳の総抗酸化能と母体の酸化ストレス度,抗酸化力との関係や,周産期データとの関連性を検討することである。
    対象と方法
     A県内の産院にて経腟分娩した褥婦50名を対象とした。調査期間は2011年1月から9月であった。血液は産褥0~2日と4~5日,産褥1か月の3時点で,母乳は産後4~5日と産褥1か月の2時点で縦断的に採取した。採取した検体は,72時間以内にF.R.E.E.(Free Radical Elective Evaluator,Diacron社製)を用いて,血漿の酸化ストレス度(d-ROMs)と抗酸化力(BAP)および,母乳の総抗酸化能(OXY Adsorbent)を測定した。
    結 果
     産褥1か月の酸化ストレス度は393.2±71.9 U.CARRであり,産褥0~2日と産褥4~5日と比較して有意に低下した(p<.001)。抗酸化力は産褥日数が経過するにつれて有意に上昇し(p<.001),産褥1か月は2288.8±252.1μmol/Lであった。酸化ストレス度と抗酸化力の変化率の間には,有意な正の相関が認められた(産褥4~5日—産褥0~2日:r=.467,p<.01,産褥1か月—産褥4~5日:r=.337,p<.05)。産褥1か月の母乳の総抗酸化能は,産褥4~5日と比較して有意に低値であった(p<.001)。母乳の総抗酸化能と,酸化ストレス度および抗酸化力の間には相関は認められなかったが,産褥4~5日の母乳の総抗酸化能の高値群(n=23)では母体の抗酸化力と正の相関があった(p<.01)。
    結 論
     産褥期の酸化ストレス度は,産褥1か月には低下するものの依然として基準値より高値であった。抗酸化力は,産褥1か月には基準値まで上昇することが明らかとなった。また,母乳の総抗酸化能の高値群では母体の抗酸化力との関連性が示唆された。酸化ストレス状態の評価は,産褥期の健康管理の指標の一つとして有用性があると考えられた。
資料
  • 中垣 明美, 千葉 朝子
    2012 年 26 巻 2 号 p. 211-221
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     産後3~4か月の母親の母親役割獲得の状況と妊娠中にイメージした産後の身体的変化と実際のギャップや,産後の生活や育児に関する妊娠中の夫婦間の調整の有無およびその他の要因との関連を検討し,母親役割獲得に必要な妊娠中の支援策を探索することである。
    方 法
     母親役割の獲得が進み,産後の不安が減少するとされる産後3~4か月の母親を対象とした。2市6施設の3・4か月乳児健診に参加した母親348名に無記名自記式質問紙を配布した。調査内容は,基本属性と「母親役割の受容に関する意識尺度(大日向,1996)」を用いた母親役割の獲得状況,産後の身体的イメージと実際,妊娠中の夫婦間における産後の生活や育児の調整の有無,出産満足度などとした。郵送により回収した113名(回収率32.5%)の回答から不備のあるものを除き107名を対象とした。
    結 果
     対象者の平均年齢は32.0歳(SD4.0),初産婦は77名(72.0%),経産婦は30名(28.0%)であった。初産婦では産後の「傷の痛み」「乳房の痛み」はイメージしにくく,実際も「イメージより辛い」が多かった。「後陣痛」がイメージより辛いことと母親役割の否定的受容(p=.049),「脱肛」がイメージより軽いことと肯定的受容(p=.016)に有意な関連があった。育児の調整と「肯定的受容では,「児の世話」(p=.035),「児の相手」(p=.036),「児のお風呂」(p=.010)が有意に高かった。家事の調整と否定的受容では「買い物」の調整ありが有意に高かった(p=.026)。母親役割肯定的受容と「出産満足度」,否定的受容と「家事負担」,「育児負担」にはそれぞれ正の相関があった。
    結 論
     妊娠中における産後の身体的変化のイメージと実際とのギャップ,特にイメージより辛いことと母親役割受容には関連があった。また妊娠中の育児に関する夫婦間調整と母親役割受容には有意な関連があった。このことから身体的イメージのギャップを埋める生活や育児についての調整を促進するなど,妊娠期からの支援策の必要性が示唆された。
  • —育児初期の核家族に焦点を当てて—
    佐藤 小織
    2012 年 26 巻 2 号 p. 222-231
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究は,育児初期の初産婦における夫婦関係の評価の高群と低群では,育児満足感を構成する諸要因の得点に違いがあるかどうかを明らかにすることを目的とした。
    対象と方法
     対象は,都内の総合病院で出産した初産婦であり,産後2~3か月の乳児を育児中の者100名とした。調査内容は,(1)デモグラフィックデータ(年齢,夜間の睡眠時間,EPDS他),(2)夫婦関係の評価を測定する尺度(Marital Love Scale),(3)育児満足感を構成する諸要因を測定する尺度と質問紙[疲労(自覚症状しらべ),自己効力感(一般性セルフ・エフィカシー尺度),育児の自己効力感(産褥期育児生活肯定感尺度の第1因子),夫のソーシャルサポートの評価を行う質問紙,母親役割受容(母性意識尺度),親の養育態度の評価(PBI)]であった。
    結 果
     有効回答者93名(93%)の結果を統計的に分析した。夫婦関係の評価得点の高群は低群と比較して,睡眠時間は有意に短時間であったが,その他の背景はほぼ同じであった。夫婦関係の評価得点の高群は低群に比べて,育児満足感を構成する6要因のうち,夫のソーシャルサポートに対する評価得点(精神的サポート;p=.000,情報的サポート;t=3.81,p=.000,道具的サポート;p=.006),自己効力感の得点(p=.040),母親役割受容の積極的・肯定的受容得点(p=.004)が有意に高かった。
    結 論
     夫婦関係の評価という視点で,育児期の母親の育児満足感を見ると,母親が夫婦関係を高く評価していると,育児に対する肯定感情が高いと考えられる。そのため看護者は,具体的な育児方法を指導するだけではなく,母親がこれまで培ってきた対処能力とともに,夫婦の関係性への関心を持つこと,夫婦のコミュニケーションの重要性を育児支援のなかで伝えていくことが必要であると考えられる。
  • 窪田 陽子, 小林 康江
    2012 年 26 巻 2 号 p. 232-241
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     はじめて育児をする母親への自信をつけるための助産師によるケアの効果を検証する。
    対象・方法
     時系列準実験研究デザインで,対象は介入群27名,比較群35名のはじめて育児をする母親である。介入群へ産後2週(電話)と3週(面談)に自信をつけるケアを行なった。自信をつけるケアは「今日まで育児をしてきて,できるようになったと感じることはどのようなことですか」「育児をしていて頑張っているな,頑張ったなと思うことはどのようなことですか」に対する母親の語りを助産師がよく聴き,承認し,保証,肯定的な評価を伝えることである。日本語版「母親としての自信質問紙」(以下J-MCQ)を産後4~5日目(事前テスト)と産後1か月(事後テスト)に実施,t検定を行い,介入の効果を検証した。
    結 果
     事前テストのJ-MCQ平均得点は介入群34.2点(SD=8.3),比較群34.5点(SD=7.9)で両群間に有意差はみられず(t=0.191, p=.849),事後テストも介入群46.3点(SD=9.1),比較群42.8点(SD=7.5)と両群間に有意差はみられなかった(t=1.663, p=.101)。各群の事前テスト,事後テストの変化を比べると介入群,比較群ともに有意な得点上昇がみられた(介入群:t=9.446, p=.000,比較群:t=6.28, p=.000)。
    結 論
     はじめて育児をする母親への自信をつけるための助産師によるケアの効果は認められなかった。しかし,介入の有無に関わらず,産後4~5日目に比べ,産後1か月で母親としての自信をより持てることが明らかになった。
  • 田中 利枝, 永見 桂子
    2012 年 26 巻 2 号 p. 242-255
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     早産児を出産した母親が,母乳育児の体験を通して,親役割獲得に向かう過程を明らかにし,母親が児との関係性を育み,母親役割を獲得していけるような母乳育児支援の方向性を考察する。
    対象と方法
     研究デザインは質的記述的研究とし,在胎週数23週~28週の早産児を出産し,母乳育児中の母親7名に,母乳育児を通した体験や思い等に関する半構成的面接法を実施した。得られたデータは質的帰納的に分析した。
    結 果
     母親は〈早産という喪失体験に伴う複雑な心理状態〉で〈妊娠期の長期安静に伴う産後の体力回復の遅れ〉もある中,出産直後からの〈母乳育児開始に向けた助産師の支援〉を受けて〈早産したからこそ生じた母乳へのこだわり〉により,搾乳を開始していた。直接母乳ができるようになるまでの搾乳の過程では〈母乳育児継続を支えた看護者や家族の存在〉により〈児のためにできる搾乳の継続〉と〈搾乳を通した役割の模索〉を繰り返していた。直接母乳ができるようになると〈直接母乳により劇的に湧き出てきた母親としての実感〉を自覚していた。またこれらの過程で〈早産により中断された育児イメージの修正〉が繰り返されていた。児の退院前には,母親が〈現実感とともに高まる児への愛情〉を感じ,母乳育児を通して〈母親としての自己効力感の高まり〉が生じる一方〈育児イメージの広がりとともに生じる予期的不安〉を抱えていた。
    結 論
     早産児を出産した母親の母乳育児を通した親役割獲得を促進するためには,母親の母乳育児への動機付けや意味付けを支援する看護の重要性が示唆された。
  • —院内助産モデルケースの聞き取り調査から—
    渡邊 めぐみ, 林 猪都子, 乾 つぶら
    2012 年 26 巻 2 号 p. 256-263
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     国内で先駆的に院内助産を行っている5ヵ所をモデルケースとし,院内助産開設に関わる要素を明らかにする。
    対象と方法
     院内助産を開設している総合病院5ヵ所の助産師各1名を対象にした。データは,院内助産の開設準備に焦点化し,半構成的面接調査にて収集した。分析は,面接内容を録音し逐語録化して,KJ法の手法を用いて統合し,各カテゴリーの関連を時系列で検討し図式化した。
    結 果
     逐語録より抽出されたデータは,グループ編成により,最終的に【院内助産開設の背景】【ハード面のシステムづくり】【助産師のスキルアップ】【人員配置と連携】に統合された。この4つの要素を構造図として表すと,助産師が進んでいく院内助産開設への道のりは,【院内助産開設の背景】で示される上り坂と,その他3要素【ハード面のシステムづくり】【助産師のスキルアップ】【人員配置と連携】で示される平坦な道のりの2段階で構成された。院内助産開設に向けて進むには,意識の高い助産師がいることが必要であった。また,この助産師が前に進む際には,【院内助産の背景】で示される上り坂が重要であった。ゴールに向かって上り坂を進む助産師を後押しする因子として,《開設へのプラス要因》としての〈世間の動向〉,〈助産師の意識統一〉,〈院内助産類似の状況〉,〈助産外来の自立〉と,《キーパーソンの関わり・支援》としての〈師長による意思統一に向けた介入〉,〈医師・病院の受け入れ,要望〉が存在した。また,進行を妨げる因子として,《開設へのマイナス要因》としての〈医師の抵抗〉,〈助産師の責任に対する不安〉が存在した。この坂道は,後押しする因子が妨げる因子に勝った場合に前に進むことができた。次の平坦な道のりは進行がスムーズであった。
    結 論
     院内助産開設に向けて進むには,助産師が高い意識を持つことに加えて後押しをする環境が必要である。
  • ―授乳場面の録画分析―
    石川 祐子, 江藤 宏美, 井村 真澄
    2012 年 26 巻 2 号 p. 264-274
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     出産直後から続く育児は,養育者の不慣れや新生児のリズムの不規則さも相まって,大きな負担を感じてマタニティブルースに陥る可能性も高い。本研究は,日本語版Nursing Child Assessment Feeding Scale(日本語版NCAFS)を用いて,生後早期の子どもとその母親の授乳場面における子どものstate,cueとそれに対する母親の反応性を観察し,母子の相互作用を記述することである。また,生後早期に日本語版NCAFSを測定用具として使用する可能性を検討することである。
    方 法
     構成的観察項目(日本語版NCAFS)に沿って,生後早期の母子相互作用とそのきっかけとなる母子の合図を明らかにする記述研究である。対象は,生後4日目で医療機関に入院中の初産の母子である。観察には,ネットワークカメラ,マイクなどを室内に固定し,授乳開始後はデジタルビデオカメラを用いて録画した。分析は,撮影時間内で母子の授乳の開始から終了までの場面を,日本語版NCAFSの76項目(0~76点)について採点した。その他,母子の行動を記述した。本研究は,所属および研究実施施設の倫理審査委員会の承認を得て行った。
    結 果
     10組の母子の授乳場面の撮影および観察を行った。撮影時間中の授乳回数は平均2.1(SD=0.7)回で,平均授乳分析時間11.3分(SD=4.2)であった。日本語版NCAFS平均得点54.1点(SD=6.1)であった。他の対象者と比較して得点が低めの母子1組が抽出され,日本語版NCAFSの総合得点は42点で,下位尺度である「親の認知発達の促進」の得点が低くなっていた。また,授乳場面の観察から,子どもの生起しやすいcueでは「養育者に手を伸ばす」(親和のcue)や「泣く」「ぐずる」(嫌悪のcue)などが認められ,母親は生起されたすべての嫌悪のcueに対応していた。
    結 論
     生後4日目の初産の母子に日本語版NCAFSを用いて観察し,子どものcueと母親の反応性など母子相互作用の特徴が明らかになった。生後1週間以内の母子の日本語版NCAFS得点のカットオフ値の設定,縦断的な母子のフォローアップに日本語版NCAFSが活用できる可能性が示唆された。
その他
  • —分娩期2012
    片岡 弥恵子, 江藤 宏美, 飯田 真理子, 八重 ゆかり, 浅井 宏美, 櫻井 綾香, 田所 由利子, 堀内 成子
    2012 年 26 巻 2 号 p. 275-283
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/08/31
    ジャーナル フリー
     日本助産学会は,健康なローリスクの女性と新生児へのケア指針を示したエビデンスに基づく助産ケア―分娩期2012を作成した。ガイドラインを普及させるため,本稿ではガイドラインの内容を紹介している。ガイドラインには,29項目のクリニカルクエスチョンが含まれ,それぞれのクリニカルクエスチョンには,エビデンスの記述,解説,引用文献が記述されている。病院,診療所,助産所において,助産師がガイドラインに示されたケア指針を採択することで,エビデンスに基づいたケア,女性を中心としたケアを推進することができる。
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