日本助産学会誌
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原著
産後尿失禁の有症率と分娩時要因の関連性の検討
—自然分娩と医療介入のある分娩との比較—
高岡 智子
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2013 年 27 巻 1 号 p. 29-39

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抄録

目 的
 分娩後早期(産後3~5日),および産後3カ月において尿失禁の有症率と関連する分娩時要因を明らかにすること,および,自然分娩における産後尿失禁の有症率を医療介入のある分娩と比較し,差を明らかにすることである。
対象と方法
 首都圏の産婦人科病棟で,経膣分娩により正期産で単胎の生児を得た褥婦421名を対象としたretrospective cohort studyを行った。分娩後早期に尿失禁に関する自記式質問紙調査を実施した後,回答者を3カ月間追跡し,再度同質問票への回答を求めた。分娩時情報は診療録より収集し,2時点の尿失禁と関連する要因を多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
結 果
 早期質問票には421名中403名が回答し,有症率は30.8%であった。産後3カ月の質問票には286名が回答し(追跡率71.0%),早期有症者の44.7%に症状が存在していた。早期の尿失禁は初産婦に多く(p=0.013),妊娠中の尿失禁の有症者に高率で(p=0.004),会陰切開の経験者に多く生じていた(p=0.006)。一方,産後3カ月の尿失禁には非妊時BMI,妊娠中の尿失禁の有無が関連していたが(各々p=0.045,p<0.001),いずれの分娩時要因とも有意な関連はなかった。自然分娩群は医療介入群に比較して早期の尿失禁の有症率が低かったが(p<0.001),産後3カ月では2群間に差はなかった。
結 論
 早期有症者の約半数は3カ月後も症状が存在する。分娩後早期の尿失禁は初産婦に高率で,会陰切開の経験者に多く生じていた。自然分娩群は医療介入群に比べて早期の有症率が低く,骨盤底機能の保持に有利であったが,産後3カ月では差はなく,分娩の影響は減弱していた。

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© 2013 日本助産学会
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