日本助産学会誌
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27 巻, 1 号
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総説
  • 前田 菜穂子, 片岡 弥恵子, 江藤 宏美, 堀内 成子
    2013 年 27 巻 1 号 p. 4-15
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     分娩後出血は,母体死亡の主要な原因であり世界的に取り組むべき課題である。本研究は,既存の文献レビューにより,分娩後出血の定義,発生頻度およびリスク因子,予防への適切な介入を明らかにすることを目的とした。
    方 法
     The National Guideline Clearinghouse,The Cochrane Library,PubMed,医中誌Webを用いて2011年11月まで検索した。タイトルおよびアブストラクトから内容の合致する文献について批判的吟味を行った。
    結 果
     分娩後出血については,従来分娩後24時間以内の500mL以上の出血と定義されていたが,近年日本では単胎の場合,経腟分娩では800mLが産科出血量の診断基準とされた。母体の健康への影響を重視し,1000mL以上の出血は重症分娩後出血と定義されており,日本における頻度は2~5%と報告されている。妊娠期に査定できる分娩後出血のリスク因子は,「胎児推定体重4000g以上」「分娩後出血の既往」「多胎」「4回経産以上」「35歳以上」「低置胎盤または前置胎盤」「羊水過多」「妊娠期の異常出血」「BMI25以上」「妊娠貧血」「子宮筋腫」「帝王切開の既往」「妊娠高血圧症候群」「過期産」,分娩期のリスク因子については,「分娩第1・2期遷延」「分娩第3期遷延」「絨毛膜羊膜炎」「陣痛促進・誘発」「器械分娩」「胎盤遺残」「回旋異常」「会陰膣壁裂傷」「クリステレル児圧出法」であった。有効な予防介入として子宮収縮剤の予防的投与を含む分娩第3期の積極的管理,胎盤娩出後の子宮底マッサージ,分娩誘発のための乳頭刺激,胎盤娩出後の乳頭刺激・直接授乳が明らかになった。
    結 論
     日本においても分娩後出血は稀なことではない。同定されたリスク因子を持つ者に対し,予防介入を行うことで分娩後出血をある程度予防することが可能となる。本研究結果を基盤に,助産所および院内助産システムにおける分娩後出血の対応ガイドラインの作成が急務である。
原著
  • 中島 久美子, 常盤 洋子
    2013 年 27 巻 1 号 p. 16-28
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は,「妊娠期の妻への夫の関わり満足感尺度」の信頼性と妥当性を検証し,尺度の有用性を検討することである。
    方 法
     対象は第1子妊娠期の夫婦800組である。夫婦ペアで回答が得られた376組のうち277組を分析の対象とした。「妊娠期の妻への夫の関わり満足感尺度」は妻用と夫用の尺度で構成され,内的整合性と因子的妥当性が確認されている。回答は5件法であり,夫の関わりに対する妻の満足の程度が測定される。基準関連妥当性の検討には「QMI」(夫婦関係満足尺度)と「SUBI」(心的健康感尺度)が使用された。
    結 果
     因子分析の結果,「妊娠期の妻への夫の関わり満足感尺度」は,妻と夫の両尺度に「妻の健康と情動への気づかい」「家事労働」「子どもが生まれることに関する夫婦のコミュニケーション」の3つが抽出された。3下位尺度は「妊娠期の妻が満足と感じる夫の関わり」の構成概念の「夫婦の親密性」「家族システム」「親になる意識」に類似する概念であり,構成概念妥当性が支持された。「妻用の尺度」と「QMI」との間に正の相関(r=.20~.63, p<.01~.05),「夫用の尺度」と「QMI」との間に正の相関(r=.25~.50, p<.01~.05)が示された。「妻用の尺度」と「SUBI」の間に正の相関(r=.20~.53, p<.01~.05)が示された。このことから基準関連妥当性が確認された。信頼性の検討では,Cronbach's α=.76~.86(妻用),α=.80~.86(夫用),折半法信頼性係数は,ρ=.86~.91(妻用),ρ=.86~.90(夫用)であり高い信頼性が確認された。
    結 論
     「妊娠期の妻への夫の関わり満足感尺度」は妊娠期の妻への夫の関わりに対する妻の満足感を妻と夫の認識から測定できる信頼性と妥当性が確認された尺度であることが証明された。本尺度の活用により,妊娠期の夫婦が相互に理解しあえる関係性のアセスメントに役立てることが期待でき,妊娠期の夫婦の関係性を支援する尺度の有用性が示唆された。
  • —自然分娩と医療介入のある分娩との比較—
    高岡 智子
    2013 年 27 巻 1 号 p. 29-39
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     分娩後早期(産後3~5日),および産後3カ月において尿失禁の有症率と関連する分娩時要因を明らかにすること,および,自然分娩における産後尿失禁の有症率を医療介入のある分娩と比較し,差を明らかにすることである。
    対象と方法
     首都圏の産婦人科病棟で,経膣分娩により正期産で単胎の生児を得た褥婦421名を対象としたretrospective cohort studyを行った。分娩後早期に尿失禁に関する自記式質問紙調査を実施した後,回答者を3カ月間追跡し,再度同質問票への回答を求めた。分娩時情報は診療録より収集し,2時点の尿失禁と関連する要因を多変量ロジスティック回帰分析を用いて検討した。
    結 果
     早期質問票には421名中403名が回答し,有症率は30.8%であった。産後3カ月の質問票には286名が回答し(追跡率71.0%),早期有症者の44.7%に症状が存在していた。早期の尿失禁は初産婦に多く(p=0.013),妊娠中の尿失禁の有症者に高率で(p=0.004),会陰切開の経験者に多く生じていた(p=0.006)。一方,産後3カ月の尿失禁には非妊時BMI,妊娠中の尿失禁の有無が関連していたが(各々p=0.045,p<0.001),いずれの分娩時要因とも有意な関連はなかった。自然分娩群は医療介入群に比較して早期の尿失禁の有症率が低かったが(p<0.001),産後3カ月では2群間に差はなかった。
    結 論
     早期有症者の約半数は3カ月後も症状が存在する。分娩後早期の尿失禁は初産婦に高率で,会陰切開の経験者に多く生じていた。自然分娩群は医療介入群に比べて早期の有症率が低く,骨盤底機能の保持に有利であったが,産後3カ月では差はなく,分娩の影響は減弱していた。
  • 楠見 由里子, 江守 陽子
    2013 年 27 巻 1 号 p. 40-47
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     冷え症における主観的指標として冷え症評価尺F度を,客観的指標としてレーザー組織血流計を用いて測定し,冷え症と周産期アウトカムとの関連について検討した。
    対象と方法
     妊娠末期の妊婦125名(初産婦名76,経産婦49名)を対象に,両手第2指の指尖部における末梢血流量の測定と,4因子8項目からなる冷え症尺度による非妊時の冷え症の自己評価に関するアンケート調査を実施した。さらに,分娩終了後には妊娠分娩経過を診療録より転記した。
    結 果
     妊娠末期の妊婦においては,冷え症評価尺度と末梢血流量の間には関連がなかった(r=-0.036, p=0.687)。冷え症評価尺度の高得点群の初産婦においては,分娩の際の入院時点の子宮口が3cm未満の開大であったものが多かった(p=0.014)。
     一方,指先の末梢血流量が少ない群と多い群で分けると,低血流量群では妊娠中の血圧が低く(p=0.047),かつ脈拍数が少なかった(p=0.024)。さらに,低血流量群の初産婦では,分娩第 II 期遷延が多く(p=0.016),ロジスティック回帰分析により交絡因子の影響を排除しても,低血流量と高年齢が分娩第 II 期遷延の要因として示された。
    結 論
     妊娠末期における血行不良は,初産婦における分娩第 II 期遷延の要因となる可能性がある。また,妊娠末期の血流量と非妊時の冷え症の自覚は関連しない。
  • 森 一恵
    2013 年 27 巻 1 号 p. 48-59
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     産後1か月が経過した母乳育児経験のある経産婦の完全母乳育児の実施について,過去と今回の母乳育児経験に関する種々の要因からその影響力の強さを明らかにし,完全母乳育児に対する決定要因を検討する。
    対象と方法
     調査を依頼した20施設のうち同意の得られた16施設において,質問紙調査を行った。対象は,正期産,単胎児出産後1か月以降2か月未満の経産婦で,産後の経過中に重篤な合併症がなく,入院期間中に母乳育児を開始している母親635名である。質問紙の作成は,先行研究と文献のレビューから母乳育児の選択と継続に関与する要因を抽出し,当該領域の研究者および助産師6名と共に調査項目や表現方法の検討を重ね内容妥当性を高めた。さらに,質問紙の回答所要時間を把握し,表面妥当性を検討するために経産婦10名と上記専門家6名にプレテストを行い,質問紙を作成した。
    結 果
     質問紙の回収は501部(回収率78.9%)で,最終的には485部(有効回答率76.4%)を分析対象とした。
     予備分析から得られた完全母乳育児への影響要因を共変量として調整し,ロジスティック回帰分析を行った結果,妊娠36週時点で出産後の授乳方法として完全母乳育児を選択している(OR=20.87, CI=10.68-40.79),母乳が足りていないように感じることがない(OR=6.56, CI=3.32-12.98),哺乳瓶やおしゃぶりを使っていない(OR=3.98, CI=2.08-7.60),上の子の授乳方法が完全母乳育児である(OR=2.74, CI=1.40-5.36),上の子が出産後1か月健診までに母乳育児支援を受けている(OR=2.26, CI=1.16-4.37)の5変数が,完全母乳育児に有意に関連していた。
    結 論
     産後1か月が経過した経産婦の完全母乳育児に関して最も影響力のある要因は,妊娠36週時点で出産後の授乳方法として完全母乳育児を選択していることであった。過去に母乳育児経験のある経産婦が,今回の授乳においてぜひ母乳で育てたいと出産前までに「完全母乳育児を選択」できるような支援が必要であることが示唆された。
  • —助産師の専門職的自律性に焦点をあてて—
    石引 かずみ, 長岡 由紀子, 加納 尚美
    2013 年 27 巻 1 号 p. 60-71
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     助産師の専門職的自律性および助産師の産科医師との協働に関連する要因を検討する。また,両者の関連性を分析することで助産師と産科医師との協働関係を強化する手掛かりを見出し,よりよいマタニティケアシステムの方向性を推進するための示唆を得ることを目的とする。
    対象と方法
     全国より無作為抽出された分娩取扱い医療施設に勤務し,現在分娩を取り扱っている助産師経験年数3年目以上の常勤助産師を対象に,自記式質問紙を用いた量的横断的調査を実施した。測定用具は基本的属性,助産師の専門職的自律性尺度および医療介入決定に関する協働と満足度尺度である。
    結 果
     研究協力者は578人(最終有効回答率59.5%)であった。
     助産師の専門職的自律性には年齢,職位,助産師経験年数,現職場の勤続年数,分娩介助経験件数との関連性が認められた。助産師の産科医師との協働には,職位および分娩介助経験件数との関連性が認められた。
     専門職的自律性の高い助産師は,産科医師との協働性も高く,専門職的自律性と協働性との関連性が明らかとなった。
     院内助産従事群は,従事していない群と比較して専門職的自律性が高く,産科医師との協働性も有意に高かった。
    結 論
     助産師の専門職的自律性を育む要因の一つとして,助産師としての専門的な臨床実践と経験の蓄積が示唆された。産科医師との協働関係を促進する要因として,組織のリーダーとしての資質の育成と,熟練した助産技術の習得,助産師が専門職としてより自律性を強化する必要性が示唆された。特に院内助産に従事する助産師は,マタニティケアに必要不可欠な要因である専門職的自律性と産科医師との協働性を兼ね備えていた。有効なマタニティケアシステムの構築には,専門的に自律し,多職種協働できる助産師の活用が有用であることが示唆された。
資料
  • 荻田 珠江, 中澤 貴代, 安積 陽子, 荒木 奈緒, 平塚 志保
    2013 年 27 巻 1 号 p. 72-82
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     分娩介助実習の初期(分娩介助数1~3例)と,実習終了時(分娩介助数10例)の2時点において,助産師学生が褥婦とのバースレビューで経験したことを明らかにし,出産体験へのケアに関する助産学教育の示唆を得ること。
    対象と方法
     対象はA大学に在籍し,看護学専攻の選択科目である助産学課程を選択した4年次学生とした。研究対象となった7名の学生を3名と4名の2グループに分け,前期実習終了時と後期実習終了時にフォーカスグループインタビューを行った。分析はS・ヴォーンらが示す手順に従って行った。
    結 果
     前期・後期実習ともに学生の話題に挙がったテーマは3つであった。「バースレビューの実施と自己評価」というテーマでは,前期で【出産体験の振り返りへのケア】と【バースレビューの難しさ】,【次回に向けた自己課題の把握】,後期では【出産体験の統合に向けたケア】,【現時点における自分の未熟さ】というカテゴリーが抽出された。「バースレビューで気づいたこと・わかったこと」では,前期で【思い込みによる対象理解】,【バースレビューを行う理由と必要性】,後期では【分娩期には捉えきれない全体像】,【助産ケアとその対象の多様性】,【個別のニーズに応える必要性】などであった。「バースレビューを実施した感想」では,前期で【好評価への申し訳なさと満悦感】,後期では【好評価による次への意気込み】であった。
    結 論
     学生のバースレビューは,出産体験の振り返りに始まり,実習終了時には出産体験の統合に向けたケアを実施するようになっていた。同時にバースレビューがもたらす効果を実感したり,助産ケアの多様性に気づく機会となっていた。教員は,学生がバースレビューの目的や意義,対象をどの程度理解しているのかを把握し,課題の明確化や不足を補うようサポートをしていくことが重要である。
  • 今野 友美, 堀内 成子
    2013 年 27 巻 1 号 p. 83-93
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     出産後の女性の健康増進を目指す出産後プログラムに参加した母親の参加前後の精神的,身体的健康の変化からプログラムの評価を行った。
    研究方法
     対象はA団体の出産後プログラムに参加する産後2か月~6か月の母親135人である。プログラムの内容は,有酸素運動,コミュニケーションスキル向上のためのワーク,セルフケアであり,週に1回2時間,4週継続して行った。測定用具は精神的健康増進の指標として日本版エジンバラ産後うつ病自己評価票(EPDS),主観的幸福感尺度,身体的健康増進の指標として研究者作成の身体的不調,参加動機等である。調査はプログラム初回,プログラム4回目,終了後1か月の3時点で行った。3時点での変化についてはrepeated ANOVAを行った。
    結 果
     プログラム4回目まで進んだ者は112人(有効回答率83.0%),終了後1か月までフォローできた者は90人(回収率80.4%)であった。
     身体的不調の総合得点の変化には有意差がみられ(p<.001),プログラム4回目で改善し,その効果は終了後1か月まで持続していた。主観的幸福感の総合得点の変化に有意差がみられ(p=.002),調査時期毎に得点が上昇した。抑うつ度を示すEPDS得点の変化に有意差がみられ(p<.001),プログラム4回目で抑うつ度は軽減し,その状態は終了後1か月まで続いていた。EPDS9点以上の割合は,プログラム初回では23人(20.5%)であったのに対し,プログラム4回目では11人(9.8%)であり,有意に割合は減少していた(p=.025)。
    結 論
     プログラムの参加により,身体の不調は改善し,主観的幸福感は高まり,抑うつ度は軽減されており,それはプログラム終了後1か月でも持続していた。今後の課題として,対照群をおいたプログラムの評価が必要である。
  • 中村 幸代, 堀内 成子
    2013 年 27 巻 1 号 p. 94-99
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     冷え症と早産,前期破水,微弱陣痛,遷延分娩,弛緩出血との関連性について分析することである。
    対象と方法
     研究デザインは対照のある探索的記述研究であり,後向きコホート研究である。調査期間は,2009年10月から2010年10月,調査場所は,早産児の収容が可能な首都圏の産科と小児科を要する総合病院6箇所である。
     研究の対象者は,入院中の分娩後の日本人女性2810名である。調査方法は,質問紙調査と医療記録からのデータ収集であり,質問紙の回答の提出をもって承認を得たものとした。
    結 果
     2810名を分析の対象とした。冷え症と異常分娩である5因子を観測変数として,構造方程式モデリングを施行し,パス図を作成した。冷え症から早産へのパス係数は0.11(p<0.001),冷え症から前期破水へのパス係数は0.12(p<0.001),冷え症から微弱陣痛へのパス係数は0.15(p<0.001),冷え症から弛緩出血へのパス係数は0.14(p<0.001),冷え症から遷延分娩へのパス係数は0.13(p<0.001)であり,いずれも正の影響を与えていた。また,前期破水から早産へのパス係数は0.05(p=0.013),前期破水から微弱陣痛へのパス係数は0.07(p<0.001),微弱陣痛から弛緩出血へのパス係数は0.08(p<0.001)であった。そして,微弱陣痛と遷延分娩の誤差間のパス係数は,0.24(p<0.001)であり相互に影響を及ぼしあっていた。
    結 論
     冷え症は,早産,前期破水,微弱陣痛,遷延分娩,弛緩出血のすべてに影響を与えている。各異常分娩間の関係では,前期破水は早産に影響を与えており,さらに前期破水は,微弱陣痛に影響を与え,微弱陣痛は弛緩出血に影響を与えている。また,微弱陣痛と遷延分娩は相互に影響し合っていた。
  • 中田 かおり
    2013 年 27 巻 1 号 p. 100-110
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     生体インピーダンス法による妊婦の体水分をあらわす測定指標と,妊娠・分娩異常との関連を探索する。
    対象と方法
     妊娠28週から30週の健康な単胎妊婦を対象とした。データ収集は,①妊娠28~30週,②32~34週,③36~39週,の3回,妊婦健康診査時に実施した。インピーダンス(以下,Imp)の測定には,マルチ周波数体組成計を使用した。妊婦の体水分と関連のある生理学的検査値と妊娠・分娩経過に関するデータは,質問紙と診療録レビューにより収集した。
    結 果
     研究協力の承諾を得られた30名の内,研究参加中断の申し出のあった1名を除外した29名を分析対象とした。
     Impと生理学的検査値との関連を分析した結果,妊娠28~30週の合成インピーダンス(Z)が低いほど,体重が重かった(r=-0.415,p<0.05)。妊娠32~34週では,Zが高いほどヘマトクリット値(Hct)が高く(r=0.388,p<0.05),脈圧が大きかった(r=0.464,p<0.05)。Impと妊娠・分娩経過との関連を分析した結果,分娩時に「微弱陣痛」と診断された群(4名)は,そうでなかった群よりもZの平均値が有意に高かった(p<0.05)。「予定日超過(妊娠41週以降)」であった群(4名)(p<0.05)と「分娩後2時間値血圧130/85mmHg以上」であった群(5名)は,そうでなかった群よりもZの平均値が有意に低かった(p<0.01)。また,これらの異常を発症しなかった群のZは,500Ω前後あるいは520Ω前後で推移していた。このことから,妊娠・分娩異常を発症しにくいZの基準域が存在する可能性が示唆された。
    結 論
     Impと体水分に関連した生理学的検査値および,特定の妊娠・分娩異常との関連性が示唆された。またZには,異常を発症しにくい基準域が存在する可能性も示唆された。今後,研究方法と分析する変数を精選し,対象数を増やしてこれらの関連性と健康な妊娠・分娩経過につながる指標を探索する,基礎研究が必要である。
  • 鷹巣 結香里
    2013 年 27 巻 1 号 p. 111-119
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/09/18
    ジャーナル フリー
    目 的
     助産師が医師と協働で妊婦健康診査を行うことについてどの様な思いを抱いているかを明らかにする。
    研究方法
     質的記述的研究デザインで実施した。2010年7月~8月に関東圏内の病院に勤務し,助産外来で妊婦健康診査を行う助産師5名に対し,半構成的面接を実施した。得られたデータをコード化し,研究参加者間でコードの比較分析を行いテーマ,ストーリーラインに整理した。
    結 果
     助産師は医師と協働で妊婦健康診査を行う際に,【助産外来を担う責任と異常を見逃すことへの恐怖心がある】が,助産外来での【経験を積みスキルアップを図ることは,やりがいに繋がる】と考えていた。そして,【医師と共に助産外来で妊婦を診ているので安心感がある】と感じ,助産師にとって【助産外来の基準は,助産師と医師を繋ぐもの】と捉えていた。しかし,医師と協働で妊婦健康診査を行う中で【共同管理すべき妊婦への役割分担に困難さとジレンマを感じている】状況にあった。そして,助産師は【医師に遠慮することで妊婦に負担をかけてしまう】と感じ,【立場が上である医師の監視下にある助産外来はやりにくい】ものであった。さらに,【助産外来は医師外来にとって都合の良い道具である】のではないかと捉えていた。
    結 論
     助産師は医師と協働で妊婦健康診査を行う中で,責任と異常を見逃すことへの恐怖心を抱きつつも,やりがいや医師の存在により安心感を得ていた。しかし,その様な中で助産師は,医師との間で役割分担の困難さやジレンマを抱き,医師の監視下では自分自身の意思決定に基づいて行動することが難しいと感じていた。
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