日本助産学会誌
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総説
分娩後出血のリスク因子および予防的介入に関する文献レビュー
前田 菜穂子片岡 弥恵子江藤 宏美堀内 成子
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2013 年 27 巻 1 号 p. 4-15

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抄録

目 的
 分娩後出血は,母体死亡の主要な原因であり世界的に取り組むべき課題である。本研究は,既存の文献レビューにより,分娩後出血の定義,発生頻度およびリスク因子,予防への適切な介入を明らかにすることを目的とした。
方 法
 The National Guideline Clearinghouse,The Cochrane Library,PubMed,医中誌Webを用いて2011年11月まで検索した。タイトルおよびアブストラクトから内容の合致する文献について批判的吟味を行った。
結 果
 分娩後出血については,従来分娩後24時間以内の500mL以上の出血と定義されていたが,近年日本では単胎の場合,経腟分娩では800mLが産科出血量の診断基準とされた。母体の健康への影響を重視し,1000mL以上の出血は重症分娩後出血と定義されており,日本における頻度は2~5%と報告されている。妊娠期に査定できる分娩後出血のリスク因子は,「胎児推定体重4000g以上」「分娩後出血の既往」「多胎」「4回経産以上」「35歳以上」「低置胎盤または前置胎盤」「羊水過多」「妊娠期の異常出血」「BMI25以上」「妊娠貧血」「子宮筋腫」「帝王切開の既往」「妊娠高血圧症候群」「過期産」,分娩期のリスク因子については,「分娩第1・2期遷延」「分娩第3期遷延」「絨毛膜羊膜炎」「陣痛促進・誘発」「器械分娩」「胎盤遺残」「回旋異常」「会陰膣壁裂傷」「クリステレル児圧出法」であった。有効な予防介入として子宮収縮剤の予防的投与を含む分娩第3期の積極的管理,胎盤娩出後の子宮底マッサージ,分娩誘発のための乳頭刺激,胎盤娩出後の乳頭刺激・直接授乳が明らかになった。
結 論
 日本においても分娩後出血は稀なことではない。同定されたリスク因子を持つ者に対し,予防介入を行うことで分娩後出血をある程度予防することが可能となる。本研究結果を基盤に,助産所および院内助産システムにおける分娩後出血の対応ガイドラインの作成が急務である。

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© 2013 日本助産学会
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