抄録
目 的
子宮収縮不全を主因とする分娩時異常出血(postpartum hemorrhage, 以下PPH)と,heavy for gestational age infant(以下HGA)との関連を疫学的に明らかにすることである。
対象と方法
首都圏の総合周産期母子医療センター1施設において後方視的観察研究を行った。対象は2007~2010年に経膣分娩(正期産)で単胎の生児を得た初産の日本人成人女性である。HGA(在胎期間別出生時体格標準値において出生体重が90パーセンタイル値以上の児)を説明変数,PPH(分娩時出血量≧500 ml)およびsevere PPH(SPPH, 分娩時出血量≧1,000 ml)を目的変数とした多重ロジスティック回帰分析を行い,オッズ比(odds ratio: OR)と95%信頼区間(confidence interval: CI)を算出した。
結 果
分析対象となった2,340名中,PPHの発生数は593名(25.3%),SPPHの発生数は63名(2.7%)であった。多変量解析の結果,HGAはPPHおよびSPPHとの間に有意な関連を認めた。HGAである場合,PPH発生のadjusted ORは2.34(95% CI 1.71-3.19),SPPH発生のadjusted ORは2.43(95% CI 1.21-4.86)であった。
結 論
HGAは子宮収縮不全を主因とするPPHの発生に対する,単独のリスク要因であることが示唆された。これにより,妊娠中からハイリスクの対象を識別できる可能性が示された。