日本助産学会誌
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妊娠期における酸化ストレス度と抗酸化力の変化
田中 泉香北川 眞理子
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2014 年 28 巻 1 号 p. 51-59

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抄録
目 的
 酸化ストレスとは,「生体の酸化反応と抗酸化反応のバランスが崩れ,前者に傾き,生体にとって好ましくない状態」と定義されている。現在,酸化ストレスに関する研究は数多くなされており,周産期においても,妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病との関連などの報告がされている。しかし,妊娠期における酸化ストレス度・抗酸化力の程度がどのような推移を示しているのかが,未だに明らかにされていない。本研究では,妊娠期の2時点における酸化ストレス度・抗酸化力を縦断的に解明し,妊娠期における酸化ストレス度・抗酸化力を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
 分析対象は,A県にある産婦人科施設に受診した妊婦に対して研究の説明・同意を得たのち,途中辞退をした1名を除く44名であった。試料の採取は,妊婦健康診査によって行われる採血により,妊娠16~18週(以下妊娠期第1回)と妊娠27~29週(以下妊娠期第2回)の計2回実施した。また,同時に妊娠経過の調査を実施した。採取した試料は,Diacron製F.R.E.E.(Free Radical Elective Evaluator)を用いて酸化ストレス度(Reactive Oxygen Metabolites, d-ROMs)と抗酸化力(Biological Antioxidant Potential, BAP)を測定した。
結 果
 妊娠期における酸化ストレス度・抗酸化力は,妊娠期第1回(妊娠16週0日~18週4日):d-ROMs平均521.2±100.6U.CARR,BAP平均2004.0±342.0μM,妊娠期第2回(妊娠27週1日~29週6日):d-ROMs平均539.1±114.9U.CARR,BAP平均1775.6±310.7μMであった。妊娠期における酸化ストレス度は501U.CARRを超えており,かなり強度の酸化ストレス状態にあった。抗酸化力は,妊娠期第1回はボーダーラインであったが,妊娠期第2回に有意に抗酸化力が不足レベルに下がった(p=0.003)。
結 論
 本研究結果から,妊娠期における酸化ストレス度はかなり強度の酸化ストレス度,抗酸化力は不足に推移することが明らかとなった。また,一般的に喫煙群,経口避妊薬使用群,肥満群は酸化ストレス度が高く,抗酸化力が低いと言われているが,それらの群と比較しても,妊娠期の酸化ストレス度は高く,抗酸化力は低いことが明らかになった。
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© 2014 日本助産学会
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