日本助産学会誌
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30周年記念論文
東日本大震災直後の施設外出産を介助した医療従事者の体験
塩野 悦子菊地 栄
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2016 年 30 巻 1 号 p. 29-38

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抄録

目 的
 本研究の目的は,東日本大震災時直後に施設外出産を介助した医療従事者の体験を記述的に明らかにし,今後の大規模災害時の看護職の出産への備え意識を高める一資料とすることである。
対象と方法
 平成25年10月~平成26年3月に,東日本大震災直後に施設外出産を介助した医療従事者3名(助産師・保健師・救急救命士)を対象に半構造化面接を行った。対象者が出産介助に至った体験の語りから共通項を見出し,質的記述的に分析を行った。
結 果
 東日本大震災直後に施設外出産を介助した医療従事者が出産を安全に正確に介助した背景には,9つの共通項が見出された。それは突然の出産介助に対する〈迷いや葛藤〉,〈自分が介助するという決意〉,〈周囲の人々の関わり〉,〈出産対応への個人の経験知〉,〈分娩進行の的確な判断〉,〈感染・出血・低体温のリスクへの的確な対応〉,〈家庭用品を代用する臨機応変さ〉,〈産婦を落ち着かせる声かけ〉,〈児をただ受けとめるだけの出産〉であった。
結 論
 本研究において,職種は違っていても東日本大震災直後に施設外出産を介助した医療従事者は安全に正確に介助していた。本結果から,大規模災害時においては,施設外出産はあり得ないことではなく,どの医療従事者にも心構えが必要であり,そのためにはリスク管理,臨機応変さ,コミュニケーションなど日頃の本質的な出産ケアが基盤になることが示唆された。

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© 2016 日本助産学会
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