日本助産学会誌
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30周年記念論文
周産期喪失のケアに従事する看護者を対象とした認知行動理論に基づくコミュニケーションスキルプログラムの開発と評価
蛭田 明子堀内 成子石井 慶子堀内ギルバート 祥子
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2016 年 30 巻 1 号 p. 4-16

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抄録
背景と目的
 患者のケアニーズを引き出し,患者中心のケアを提供するために,コミュニケーションは重要な鍵となる。しかし,周産期喪失は予期せずして起こり,患者の感情と自分自身の感情の双方に対処する難しさから,多くの看護者がコミュニケーションの難しさを経験する。本研究は,周産期に子どもを亡くした両親にケアを提供する看護者を対象に,認知行動理論に基づくコミュニケーションスキルプログラムを開発し,その有用性を評価することを目的とした。
方 法
 一群による事前事後評価研究。対象は周産期喪失のケアに従事する看護師/助産師。プログラムのゴールは,対象者の態度・行動に変容が認められること。有用性の評価指標は,自己効力感,ケアの困難感,共感満足と共感疲労,コミュニケーションの変容とし,プログラム実施前,実施後,実施1か月後の3時点で測定した。
結 果
 47名の看護師/助産師が1日のプログラムに参加,内37名(78.7%)が1か月後の質問紙まで終了した。①自己効力感は実施後有意に上昇し(p=.000),1か月後も実施前より有意に高かった(p=.000)。②ケアの困難感は実施後有意に減少し(p=.000),1か月後も有意に低かった(p=.000)。③共感満足と共感疲労は,実施前後で有意差はなかった。サブグループ解析により,実施前に自己効力感が低くケアの困難感が高い群(13名)では,共感疲労の要因である二次的トラウマが有意に減少した(p=.001)。④実施1か月後のコミュニケーションの態度・行動の変容を感じている者が28名(75.7%)であった。
結 論
 本プログラムは,看護者の自己効力感を高め,困難感を軽減することに機能し,その変化は1か月後も持続していた。さらに,看護者の認知の変容をもたらし,コミュニケーションにおける態度・行動の変容をもたらしていることが示された。
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© 2016 日本助産学会
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