日本助産学会誌
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原著
混合研究法による助産師の心的外傷体験の実態:PTSD,レジリエンス,心的外傷後成長との関連
麓 杏奈堀内 成子
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2017 年 31 巻 1 号 p. 12-22

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抄録

目 的

喜ばしい体験と同時に不測の急変に直面することのある助産師の心的外傷体験の実態を明らかにし,その心的外傷体験後の心的外傷後ストレス障害(Posttraumatic Stress Disorder:PTSD)発症リスクやレジリエンス,外傷後成長(Posttraumatic Growth:PTG)との関連を探索することである。

対象と方法

全国の周産期関連施設と教育機関から,層別化無作為割り付け法で抽出した308施設1,198名の就業助産師に質問紙を郵送した。有効回答者681名(56.8%)のデータから混合研究法を用いて,量的データは統計学的分析を,質的データは自由記載の内容分析を行い,得られたカテゴリと各変数との関連を検討した。

結 果

心的外傷体験を記述した者は575名(84.4%)で,その内容は【分娩に関連した母子の不測な状態】【助産師の辛労を引き起こした状況】【対象者の悲しみとその光景】【自分に向けられた不本意な発言や苛酷な環境】の4つに分類された。【自分に向けられた不本意な発言や苛酷な環境】という直接外傷体験をした助産師の,日本語版改訂出来事インパクト尺度(Impact of Event Scale-Revised:IES-R)平均値が最も高く,またPTG平均値が最も低かった。さらに86名(15.0%)がその心的外傷体験を機に退職を検討していた。また,PTSDと就業継続意思(r=−.229),サポートと就業継続意思(r=−.181),PTSDとサポート得点(r=−.143),PTGとサポート(r=.148),PTGとレジリエンス(r=.314)は有意な関連を認めた(p<.001)。

結 論

直接外傷体験をした就業助産師はPTSD発症リスクが高かった。心的外傷体験をした助産師が職場内のサポートを得ることは,PTSD発症のリスクの低減,離職予防,さらにその助産師を成長させるポジティブな要素として働くことが示唆された。

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