2018 年 32 巻 1 号 p. 37-48
目 的
日本の難民支援機関に難民女性からの相談が増えていることを踏まえ,2013年に試験的に実施された日本在住の難民女性に対するリプロダクティブヘルス向上を目指すプログラムを改訂し,その評価を行う。
対象と方法
研究デザインは,前後比較介入研究である。日本に住む15~49歳の難民女性を対象に,月経・妊娠,避妊法,性感染症,陰部の清潔に関する内容を含むプログラムを実施した。自記式質問紙を用い,プログラム前後で知識,認識,自己効力感,自尊感情について,またプログラム実施後にはプログラムの内容や実施設定について尋ね,プログラムの評価を行った。
結 果
研究対象者は17名,うち分析対象者は31~48歳の7名,全員東南アジア出身であった。知識はプログラム参加前後で合計平均点が8.43点から13.00点に有意に上昇し(p=0.001),項目別正答率は【排卵日の特定】(p=0.031),【緊急避妊法の効果】(p=0.031),【膣内洗浄の是非】(p=0.016)で有意に上昇した。認識では【コンドームを使うつもりがある】(p=0.038),【コンドームを正しく使うことができる】(p=0.041)で有意差が認められた。自己効力感はプログラム参加前後で有意差が認められず,自尊感情は有意に高くなっていた(p=0.004)。プロセス評価では,実施回数や参加人数については約半数が〔少ない〕と回答していた。興味深かった内容については,コンドームワークや病気の知識に関する回答が多く,ワーク(基礎体温,サイクルビーズ,コンドームの3種類)は過半数が〔よかった〕と回答していた。
結 論
難民女性のリプロダクティブヘルスに関する知識,認識が向上し自尊感情が高まったが,自己効力感は長期的に変化するものであるため変化しなかった。参加者に合わせた回数の設定,プログラム実施の数ヵ月後に長期的な評価をすることが今後の課題である。