2019 年 33 巻 1 号 p. 14-26
目 的
分娩後の骨盤底筋訓練を助産師が経腟触診にて指導することの実行可能性を,指導法を習得するための手順書の作成と,助産師が指導法を習得するプロセスから検討することである。
方 法
第一段階として経腟触診による骨盤底筋訓練手順書を作成し,泌尿生殖系の治療・看護を専門とする8名の医療職(助産師・看護師・医師)によってその適切性を検討した。第二段階として,助産師7名を対象に修正した手順書を用いて研究者が30分程度のレクチャーを行った。その後同意を得られた産褥4日目の褥婦に助産師が経腟触診による骨盤底筋訓練を実施した。実施後はリフレクションガイドを用いて振り返りを行い,質的記述的に分析した。
結 果
第一段階では,経腟分娩後の脆弱な骨盤底筋の状態を踏まえた具体的指導内容についての助言を得た。実施場所と実施時期,所要時間,使用する潤滑剤について検討し手順書を修正した。第二段階では,実施前は経腟触診の方法・経腟触診の評価指標であるOxford scaleについての質問があったが,実際は困難なく実施できていた。助産師とのリフレクションの結果から,【技術の獲得】【経腟触診の体感】【実践に向けた意識】のカテゴリが抽出された。対象となった褥婦からは実施後のインタビュー・無記名式質問紙ともに否定的な意見はなく,肯定的な評価であった。実施にあたり問題となる点は見られなかった。
結 論
本研究に参加した助産師は,作成した手順書を用いて経腟触診による骨盤底筋訓練指導法を困難なく習得でき,実施に問題は生じなかった。経腟触診による分娩後の骨盤底筋訓練は,助産ケアとして臨床で実践できることが示唆された。